解体工事内容に関する基礎知識
解体工事の安全対策ガイド
解体工事は、建物を壊すという性質上、作業員だけでなく近隣住民や周辺建物にも大きなリスクを伴います。
万が一事故が起きた場合、工事を行う業者だけでなく、依頼主であるお施主様の賠償責任が問われるケースもゼロではありません。
ここでは、過去の事故から見える危険ポイントと、国の定める安全対策、現場で行われる具体的な取り組み、そして業者選びのチェックポイントをわかりやすく整理します。
解体工事で起きやすい主な事故
解体工事は常に危険と隣り合わせです。まずは、どのような事故が起きやすいのかを把握しておきましょう。
外壁・建物の崩壊による事故
解体工事では、騒音や落下物を抑えるために、建物の内側から取り壊し、最後に外壁を撤去するのが一般的です。
しかし、外壁の転倒防止策が不十分だと、外壁が倒れて隣家を損傷したり、通行人を巻き込む重大事故につながるおそれがあります。
実際に、外壁のワイヤー固定や警備員の配置などの安全対策を怠った結果、高校生が死亡する事故も発生しています。
このような事故を受けて、国土交通省は外壁崩落による災害防止ガイドラインを定め、安全対策の徹底を求めています。
車両・重機の衝突・横転事故
解体工事ではショベルカーなどの重機を使用しますが、近年は大型で高出力の重機が使われることも多く、作業員により高度な操作技術が求められています。
- 狭く足場の悪い現場で重機が横転し、操縦者が死亡した事例
- 公道で工事車両と一般車両が衝突した事例
など、重機・車両が関係する事故は少なくありません。
事故を防ぐには、作業主任者による明確な工事手順の作成と周知、作業員への安全教育、監視員や誘導員の適切な配置が不可欠です。
高所で作業を行う解体工事では、足場からの転落事故も多く発生しています。
足場の崩壊や強度不足、作業員の過労・不注意が重なり、大きな怪我につながるケースもあります。
被害を受けるのは主に現場の作業員ですが、重大な事故が起きれば工事は中断され、工期の遅延や追加費用の発生など、施主にも影響が出ます。
豪雨・強風など悪天候による事故
工期短縮やコスト削減を優先し、豪雨や強風などの悪天候時でも作業を強行した結果、以下のような事故が起こることがあります。
- 足を滑らせての転落
- 強風にあおられた足場や養生パネルの倒壊・飛散
- 壁や屋根の一部が飛ばされ、建物や人にぶつかる
- 強風で重機の操作が不安定になり、近隣家屋を破損
天候が不安定な場合は、工事を中断する判断や、現場を離れる前の倒壊・破損防止対策が重要です。
法律とガイドラインに基づく安全対策
解体工事の安全対策には、国や行政が定める法律・ガイドラインが深く関わっています。
業者がこれらを守っているかどうかは、安全性を判断するうえで大きなポイントです。
労働安全衛生法・労働安全衛生規則
「労働安全衛生法」は、労働災害を防ぎ、労働者の安全と健康を守るための基本的な法律です。
これを受けて定められた「労働安全衛生規則」では、解体工事に関して次のような点が定められています。
・アスベストなど有害物質の飛散防止対策
・解体工事で使用する機械・設備の安全基準
・足場からの墜落防止措置の強化 など
解体工事の現場でも、これらの法令・規則を守ることが事故防止につながります。
国土交通省のガイドライン
国土交通省は、「建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドライン」を公表し、建設業者に対し次のような点を求めています。
- 解体前の建物の事前調査を行い、安全に配慮した施工計画を作成すること
- 解体途中に想定外の構造・設備が見つかった場合、工事を中断し計画を見直すこと
- 外周が張り出している建築物やカーテンウォール等は、安全性を重視した工法を選択すること
- 増改築部分や構造の異なる接合部は、特に強度に配慮して解体すること
- 大規模な建築物の解体では、事故発生時の被害の大きさ・過失責任を十分認識して計画・実施を行うこと
- 解体の安全検討に必要な設計図を、適切に保存・継承すること
これらの法令やガイドラインを理解し、遵守しているかどうかは、解体業者の安全意識を見極める重要な指標となります。
現場で実施される主な安全対策
安全な解体工事のためには、法律を守るだけでなく、現場レベルでの継続的な安全管理が欠かせません。
危険予知活動(KY活動)
事故を未然に防ぐため、現場では工事前に危険を予測して、どう対処すべきかを想定する危険予知活動(KY活動)が行われています。業者ごとに細かい内容は異なりますが、KY活動は主に次の流れで行われます。
足場と養生の安全対策
足場は、解体工事の中でも特に安全性が求められる設備です。
強風や雨にさらされた足場は、見た目に問題がなくても強度が落ちていることがあるため、定期的な点検と補強が欠かせません。
安全性を高めるための主な対策には、次のようなものがあります。
- 足場と建物をワイヤーで連結し、倒壊を防ぐ
- 強度の高い接続金具を使用し、揺れや歪みを抑える
- 足場からの墜落防止措置(手すり・安全帯の使用など)を徹底する
強風を想定した養生の工夫
粉塵の飛散を防ぐため、足場の周囲には養生シートや防音パネルが設置されます。しかし、風の抜け道がないと、シートやパネルが風を受け止めてしまい、足場が大きく揺れる原因になります。
そのため、次のような対策が取られます。
- 台風や強風が予想される時期のみ、出隅部分の養生シートを絞る・撤去する
- 取り外しが難しい防音パネルだけで全面を囲わず、一部をシート養生にして風の通り道を作る
- 現場を離れる前に、足場・養生の固定状況を再確認する
このように、「風を防ぐ」と「風を逃がす」のバランスをとることが、安全確保のポイントになります。
損害賠償責任保険とその役割
どれだけ安全対策を徹底しても、リスクをゼロにすることはできません。万が一の事故に備えた保険も重要です。
建設業に関わる保険には、建設工事保険・土木工事保険・組立保険などがありますが、解体工事は事故の危険性が高いことから、適用外とされるケースが多いです。
そのため、解体業者が損害賠償責任保険(請負業者損害賠償責任保険など)に加入するのが一般的です。
請負業者損害賠償責任保険とは、請負した工事を行うにあたって、現場などで事故が起こり人や物に危害を加えてしまった場合に、被る損害について保証する保険です。
万が一作業中に事故が発生した場合、損害賠償責任保険に加入していない解体業者は負担額を支払うことができず、費用をお客様が負担しなければならない可能性もあります。
そのため解体業者を選ぶ際は、損害賠償責任保険に加入の有無を必ず確認しましょう。
解体無料見積ガイドでご紹介する認定解体業者は、万が一の事故を保証できる「損害賠償責任保険」に加入しています。
認定解体業者についてはこちら損害賠償責任保険の種類
損害賠償責任保険の代表的なものは、下記のとおりです。
☑損害賠償責任保険の種類
1 会社単位の保険
会社単位で加入する保険です。年間の売上金額によって保険額が決定し、その年の全ての工事が保険対象になります。
2 工事単位の保険
工事現場ごとに加入する保険で、工事の請負金額により保険料が決定し加入した工事にのみ適用される保険です。通常よりリスクの高い工事現場だけに加入されることが多いです。
3 車両単位の保険
重機やトラックなど、車両単位で加入する年間の保険で、それらの機械が関係する工事だけに適用される保険です。
保険でカバーされないトラブルもある
解体業者が損害賠償責任保険に加入していても、すべてのトラブルが補償されるわけではありません。
特に注意が必要なのは、
・塵や埃による汚損
・騒音や振動に対する苦情・損害賠償
です。
これらはある程度発生が予測できるため、保険の対象外となることがほとんどです。
そのため、
・工事前の近隣挨拶
・養生・水撒き・清掃の徹底
・工事中の丁寧な説明や柔軟な対応
などによって、そもそもトラブルを起こさないことが重要になります。
施主としては、「保険加入の有無」だけでなく、
・解体工事も補償対象になっているか
・第三者に対する賠償がどこまでカバーされているか
といった点まで、具体的に確認しておくと安心です。





