解体工事とは、既存の建物を取り壊して撤去する工事を指します。「上物(うわもの)」と呼ばれる建物部分を解体するのはもちろん、廃材の処分や、更地をきれいに整える「整地(せいち)」なども解体工事に含まれる大事な工程です。
実際の解体工事の内容は、「更地にしたい」「一部だけ取り壊したい」「内装だけ解体したい」など、依頼主の目的によってさまざまです。
また、建物の構造や立地条件によっても、必要な費用や工期は異なります。
本ページは、解体が必要な建物を所有している方に、解体工事に対するイメージを具体的にしていただくことを目的としています。
解体工事への理解を深めるために、解体工事の種類や工法、関連する法令などについて、それぞれ解説していきます。
解体工事には、目的に応じたいくつかの種類があります。
「更地にして土地を売却したい」「減築のため建物の一部だけ解体したい」「店舗撤退のため内装を取り除く必要がある」など、建物を最終的にどのような状態にしたいのかによって、最も適した解体工事を発注することができます。
まずは、ご自身が所有する建物にはどんな解体工事が必要となるのかを把握しましょう。解体工事の種類を解説していきます。
解体後に土地売却や建て替えを検討している場合は、敷地内にある建物をすべて解体します。敷地を更地にする必要がある場合は、建物本体の解体だけでなく、樹木やブロック塀など敷地内にあるすべての物を撤去します。
以下2つの工事手法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ミンチ解体は、建物の構造や使われている建材に関係なく、重機を使って一気に建物を壊していく方法です。
工期が短く人件費などを抑えることができるため、かつては主流の工事手法でした。しかし、2002年5月に完全施行された建設リサイクル法で、廃材の取り扱いが厳しくなり現在は禁止されています。
分別解体は、建材を品目ごとに分別しながら計画的に解体していく手法です。
廃材の分別は手作業で行われるため、工期は長く人件費もかかります。しかし、分別解体では、その分より多くの建材をリサイクルできるのが特徴です。
分別解体は、建設リサイクル法が施行されて以降、法令に遵守した正しい施工方法として現在の主流となっています。
ライフスタイルの変化などでの減築や、長屋の切り離し工事など、建物の一部のみを取り壊すケースがあります。一部解体の大まかな流れとしては、まず、解体を希望する建物の一部を取り壊します。取り壊しが済んだら、残った建物に新たな外壁を取り付け、再び建物としての機能を取り戻せるようにして完了です。
はつり工事とは、コンクリート製の建造物に対して何らかの加工(切る、削る、壊す、穴をあけるなど)をする工事です。専用の工具を使い、人の手で作業する場合が多いですが、規模によっては油圧式のアタッチメントを備えた重機を使用する場合もあります。
なお、はつりは漢字で「斫り(はつり)」と表記されることが一般的ですが、ごくまれに「削り(はつり)」と表記される場合もあります。
はつり工事については、こちらの記事で詳しく解説しています。
店舗の撤退や、リフォーム・リノベーションなどで、建物の内装部分のみを解体するケースもあります。内装の解体は、どこまで解体するかによって、「内装解体」「スケルトン仕上げ」「原状回復」と細分化されています。
内装解体とは、建物の内装の一部または全部を解体する工事のことを指します。建物の躯体(柱・梁など)を除き、床材・間仕切り・造作棚・壁紙・住宅設備といった内装のみを解体する工事は、施工範囲の大小を問わず内装解体に該当します。内装解体は主に、借りたテナント物件を貸主に返却する際の「原状回復工事」に伴い必要となることが多いです。
内装解体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
スケルトン解体工事とは、建物の骨組み以外の内装部分をすべて解体する工事のことを指します。飲食店や美容サロン等の店舗として利用したテナント物件を、貸主に返却する際に行うことが一般的です。
そのほか、住宅、アパート・マンションのリフォームやリノベーションの際にも、スケルトン解体によって内装をすべて取り除くことがあります。壁、天井、床、水道管、電気設備などもすべて撤去することで骨組みだけが残るため、内装や設備などを新しく取り替えることができます。
スケルトン解体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
解体工事は、建物の構造や使われている建材によって適切な工法が異なります。ここでは、「木造」と「鉄骨造・鉄筋コンクリート造」に分けて、それぞれの工法を簡単にご紹介します。
建物構造のなかで、取り扱い件数および対応業者が最も多いのが「木造」です。一般的に木造住宅の解体は、新築や土地売却、借地返却などをきっかけに行うケースが多く、解体工事はその後の土地活用や次の工事につながる前段階として重要な工程です。重機を使う「機械解体」が主流で、現場の状況によって手作業による「手壊し工事」も実施します。
機械解体は、油圧ショベルなどの重機を用いて建物を解体する工法です。一般的な2階建て30坪前後の木造住宅を解体するのに必要な工期は2週間前後です。なお、基本的に重機は公道を走ることができません。そのため、機械解体はトラックで重機を搬送する必要があり、十分な道幅がないと輸送作業ができません。
手壊し解体は、重機を使わずに人力で建物を解体する工法です。「近接する建物との距離が近い」「重機が搬送できない」など、現場状況によって重機が使用できない場所では「手壊し工事」を行います。重機を用いた解体に比べ、手間と工期がかかることからコストは30~50%程度高くなる傾向があります。さらに、大量に排出される廃材を回収するトラックが近くに停められない場合は、これらの搬送も手作業になり、解体業者の負担が大きくなります。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造(RC造)の建物は、木造に比べて頑丈です。そのため、解体する手間が多くなります。
圧砕機工法は、鉄筋コンクリートを圧砕しながら解体する工法です。「コンクリート圧砕機」と呼ばれるハサミ状のアタッチメントを油圧式ショベルカーなどの重機の先端部に取り付けて行います。このアタッチメントには「大割り」や「小割り」の種類があり、小さくなるほど廃材を細かく圧砕することができます。圧砕機工法は「振動や騒音が少ない」「分別に適している」というメリットがあります。
ブレーカー工法は、「ノミ」と呼ばれる杭を使用し、鉄筋コンクリートに打撃を与えて細かく砕いていく工法です。施工範囲によって、「大型ブレーカー」または「ハンドブレーカー」のいずれかを選択します。大型ブレーカーは油圧式で規模が大きいものを指し、ハンドブレーカーは狭い場所でも作業ができる長さ70cm、重さ20kgほどのものを指します。ブレーカー工法のデメリットは連続的な騒音や粉塵が出ることです。そのため、近隣への迷惑を考慮し、市街地ではあまり用いられることがありません。
転倒工法は、建物の壁や柱を敷地の内側に引き倒してから、地上で細かく分別解体する工法です。転倒工法には、ワイヤーを掛けて引き倒す方法と、重機と溶断で引き倒す方法があります。周囲に足場を組んで上から順番に解体していく方法に比べ、粉塵の飛散量が少ないのが特徴です。主なメリットは、高さのある壁、柱、煙突などを解体する際に、高所作業をせずに済むことです。高い外壁や煙突がついた建物を解体する際に用いられます。
カッター工法は、ウォールソー工法とも呼ばれており、コンクリートやアスファルトを切断する際に用いられる工法です。コンクリートにレールを固定し、その上をカッター付きの切断機が移動することでコンクリートを切断していきます。
カッター工法は、作業時に水を使用する「湿式」と、使用しない「乾式」の2種類に分けられます。湿式は水を使って粉塵の発生を抑え、切断時に発生する摩擦熱を冷やすのが特徴です。水を使うことができない現場では乾式が用いられます。騒音や振動、粉塵の飛散が比較的少なく、住宅密集地や商業施設などでも使える工法です。撤去の精度を高めるために用いられることも多く、耐震補強工事や建物の改修工事にも採用されます。
解体工事は、建物本体の解体のみではありません。
建物に残された不用品の処分や、敷地内にあるさまざまなものの撤去が発生し、それぞれに費用が発生します。
残置物とは、建物の所有者または住人が退去の際に残していった設備や家財道具のことです。一般的な残置物としては日用品、家電製品、粗大ゴミなどがあげられます。
なお、建物に残っている物はすべて、解体工事が始まる前に撤去する必要があります。
残置物の処分については、こちらの記事で詳しく解説しています。
アスベスト含有製品は段階的に規制されており、現在は製造、使用などが完全に禁止されています。しかし、完全に規制される前の2006年以前に建てられた建築物には、建材として使用されている可能性がかなり高いといえます。建物の解体時、条件を満たす建物は事前のアスベスト調査と除去が義務づけられているので、注意が必要です。
アスベストが含まれる建物の解体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
付帯工事は建物によって発生するものが異なります。どのような付帯工事が必要で費用がいくらかかるのかは、解体業者が現場を視察し見積りを出す際に、詳しく知ることができます。
付帯工事の種類は多岐にわたりますが、その一部をご紹介します。それぞれ詳しく解説した記事があるので、ぜひ参考にしてください。
● 植木や植栽を含む庭の撤去
● ブロック塀の撤去
● 浄化槽の撤去
● 井戸の解体・撤去
解体工事を行うためには「建設業許可」もしくは「解体工事業登録」が必要です。
また、必須ではありませんが「産業廃棄物収集運搬業許可」や「石綿作業主任者」などの資格を保有していると、手掛けられる業務の幅が広くなります。
「建設業許可」は、建設業法で定められた「建設工事を請け負うための許可」で、全部で29種類に別れます。解体工事を行うためには、その中で「29 解体工事」の許可を得ている必要があります。
建設業許可を保有していると、解体工事の施工金額を問わずに請け負うことが出来ます。
「解体工事業登録」は、建設リサイクル法で定められた「解体工事を行うために必要な登録制度」です。この登録を行っていれば、建設業許可を保有していなくても「税込み工事費500万円未満」の工事を請け負うことが出来ます。
一般家屋の解体工事で500万円を超えることはレアケースなため、解体工事業登録のみを保有している解体業者も多く存在します。
対象工事の金額(税込み) | 必要な許可および登録 |
---|---|
500万円以上 | 建設業許可 |
500万円未満 | 解体工事業登録 |
解体工事業登録は、営業所(事務所)を置く地域だけでなく、工事を行う地域を管轄している都道府県、それぞれで申請する必要があります。
以下のような資格があれば、解体工事の業務幅が広がります。
解体工事にかかわる法律として、以下の2つが挙げられます。
「建設業法」では、建設業を営む者の資質の向上・建設工事の請負契約の適正化等を図るための規制を定めています。
たとえば、建設業法第3条に基づき、建設工事の完成を請け負うためには、公共または民間を問わず建設業の許可を受けなければなりません。二以上の都道府県に営業所を設けて営業する場合は国土交通大臣の許可が必要で、一つの都道府県に営業所を設けて営業する場合は都道府県知事の許可が必要です。
また、下請契約の規模等により「一般建設業」と「特定建設業」に分けられます。1件の工事代金について、4,000万円(建築工事業の場合は6,000万円)以上となる下請契約を締結する場合は特定建設業の許可が必要で、それ以外は一般建設業の許可です。この許可の有効期間は5年間のため、5年毎に更新を受けなければ失効します。
建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化に関する法律)は、建築現場や解体現場から排出される廃棄物を正しく処理し、再生資源としてリサイクルするために定められた法律です。
解体工事で出る廃材には、コンクリートやアスファルト、木材といった再資源化が可能な建材が含まれています。
平成12年5月に建設リサイクル法が施行されてからは、それぞれの建材を品目ごとに分別することが義務付けられました。万が一違反があった場合は、各自治体で定められた懲役や罰金刑が課せられることになります。
なお、届出が必要になるのは、延べ床面積の合計が80m²以上の「特定建設資材」を含む建物を取り壊す工事です。その他、コンクリートやブロック等による工作物でも請負代金が500万円以上のものは、建設リサイクル法の対象になります。
届出の手続きには、届出書・分別解体計画表・付近見取り図・建築物の写真・工程表などが必要になります。解体工事を行う7日前までに都道府県知事へ提出してください。
ライフラインの停止
工事の前に、電気、ガス、インターネットなどのライフラインの停止やケーブルなどの撤去の手続きが必要です。工事は建物だけではなく、設備の部分も撤去する必要があるためです。ライフライン停止の手続きは、工事施工の1週間前までには終えるようにしましょう。水道は工事中に使用するため停止しない場合があります。
近隣への挨拶
工事前に、近隣住民への挨拶を行います。工事により発生する騒音、振動、ほこり等による近隣トラブルを防ぐためです。挨拶は業者が行うことが一般的ですが、依頼主が同行するとより丁寧な印象を与えることができます。全ての近隣住民に漏れなく挨拶をするため、施工開始の10日~1週間くらい前に挨拶まわりを始めましょう。
※遠方の解体工事をされる場合も、ご契約いただいた解体業者がご近隣への挨拶をさせていただく際にはその旨をお伝えし、失礼のないようにさせて頂きます。
※地域によっては条例等によって工事開始前に近隣の方々への工事内容の説明が義務付けられていることもあります。
解体工事が始まると、足場が組まれ、近隣へのご迷惑を最小限にするための養生がなされます。
建物の構造・立地条件により適切な工法で解体され、廃材は分別されます。
実際の解体工事の一例をご紹介します。
工程 1
建物の周囲に養生がされます。
ホコリや塵の飛散が防がれます
工程 2
重機が入る前には屋根材の撤去作業です。
工程 3
手作業による内装の分別解体作業も行われます。
工程 4
重機によって解体されます。
工程 5
出た廃材は、分別されて運ばれていきます。
工程 6
建物の基礎が撤去されます。
工程 7
はつり工事。コンクリートで固められている箇所も解体されます。
工程 8
コンクリートも分別されて運ばれていきます。
工程 9
解体撤去の後は、地面が整えられ、整地されていきます。
ここまで、解体工事の内容や工法について広く紹介してきました。解体すべき建物を所有していても、解体工事を後回しにしてしまう方は少なくありません。解体工事は一般の方にとって馴染みがないほか、費用が高額であることなど、実施するにあたっての心理的・物理的なハードルが高いのが理由です。これらを踏まえて、当協会はお客様のご希望・きっかけにあわせた解体工事を行うことができる解体業者を調査、選定しています。適正最安値で施工可能な解体業者を紹介することで、質の高い解体工事をかなえます。
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