浄化槽の撤去費用 浄化槽の種類と処分費をあわせて解説

浄化槽は、公共下水道が利用できない立地の住宅で生活排水を流すために地下に設置されているもの。普段意識することは少ないかもしれませんが、浄化槽がある物件では解体工事を行う時に必ず浄化槽の撤去が必要となります。

この浄化槽の存在に気付かず解体工事を行った場合、見積書にない浄化槽の撤去費用が発生してしまいます

なお、当協会の保有するデータでは、住宅の解体に伴う浄化槽撤去は、1,436件中124件ありました。

今回は、浄化槽を撤去する際に注意すべきポイントや撤去にかかる費用をご紹介します。解体工事を考えている方はもちろん、浄化槽の転換工事等を行いたいと考えている方もぜひチェックしてみてください。

一般住宅での浄化槽撤去の費用実例

一般的な2階建ての戸建て住宅であれば、延べ床面積はおよそ25坪から30坪前後です。

そこで、実際に25坪の住宅で、浄化槽の撤去を伴った解体工事の見積り例をご紹介します。

なお、費用は総額で1社目が159万5,000円、このうち浄化槽の撤去に要した費用が1万8,000円、2社目は総額が163万3,500円、このうち浄化槽の撤去に要した費用が5万円という結果でした。

見積書の内訳
1社目の見積書(一部抜粋)
見積書の内訳
2社目の見積書(一部抜粋)

浄化槽の種類による撤去費用の違い

浄化槽は単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の2種類があり、主に汚水の処理能力が異なっています。また、現在では浄化槽法により合併処理浄化槽のみ設置が行えます。

なお、見積書に種類の明記がされていることがないため、単独処理浄化槽と合併処理浄化槽とで撤去費用の差はありません。

単独処理浄化槽

単独処理浄化槽は、家から出る生活排水のうちトイレの汚水のみをろ過して河川に流す浄化槽で、みなし浄化槽や単独浄化槽とも呼ばれます。トイレ以外のキッチンや風呂場等から出た生活排水は汚水処理することができず、そのまま河川に流してしまうのが特徴です。

ただし、環境保全等の目的から浄化槽法の改定により、単独処理浄化槽は2001(平成13)年4月1日以降の新たな製造・販売・設置が禁止されています。

合併処理浄化槽

合併処理浄化槽は、合併浄化槽とも呼ばれる方式で、単独処理浄化槽で処理できない生活排水も併せて汚水処理できるのが特徴です。そのため、単独処理浄化槽の製造が禁止された2001年4月1日以降は全てこの方式が使われており、現在では主流の浄化槽となっています。

なお、一般的には単独処理浄化槽はマンホールの数が2枚、合併処理浄化槽はマンホールの数が3枚(コンパクト型の場合は2枚の可能性もあり)設置されています。

浄化槽の見分け方

画像引用:合併処理浄化槽と単独処理浄化槽の見分け方(参考) | 和歌山県

浄化槽の材質による撤去費用の違い

浄化槽の材質はコンクリートFRP(繊維強化プラスチック)の二種類があります。古くに建築された建物の浄化槽にはコンクリートが用いられていることが多く、対してFRPは比較的新しい住宅で主流となっています。

こちらは見積書に材質の明記がされていることがあります。当協会が保有している浄化槽撤去の記載がある見積書のデータのうち、“材質が明記されているもの”を抽出した場合、浄化槽撤去費用の金額の幅は以下のとおりです。

・コンクリート製 56,000円~

・FRP製 20,000~50,000円

また、この金額幅を元に、“見積書で浄化槽撤去費用が50,000円以下のものはFRP、50,001円以上のものはコンクリート製”と仮定し全体からの平均を推測した場合はこのようになります。

材質 撤去費用の幅 平均撤去費用
コンクリート製 56,000~150,000円 93,100円
FRP製 20,000~50,000円 33,235円

※上記の平均撤去費用は、うち37%がコンクリート製と明記、うち63%がFRP製と明記された見積りデータをもとにしています。

浄化槽の撤去方法は3種類

浄化槽を解体撤去する方法は3種類あります。全撤去・埋め戻し・埋め殺し(砂埋め処分)のうち、現在主流なものは全撤去です。一般的には全撤去により一回ですべてを撤去することが推奨されています。

浄化槽の全撤去

浄化槽本体をすべて解体し、その中にある部材や装置も取り除き、その土地に何も残さない方法が全撤去です。

3つの方法のうち最も撤去費用がかさむ方法ですが、唯一土地を更地にできるため、全撤去の後は土地の売却をすぐに行うこともできますし、工事後に地盤沈下等が起きることもありません。

衛生的にも土地の質的にもメリットがあり、撤去の際に推奨されることが一番多い方法です。

浄化槽の埋め戻し

埋め戻しは、浄化槽本体を1/3ほど撤去し、部材や装置を取り除いたのち、残りの2/3を地中に埋める処分方法です。

全撤去よりも工事自体のコストはかかりませんが、その土地に浄化槽の残り部分が残ってしまいます。この場合、いずれは埋め戻しを行った残り部分を解体する工事を行うこととなり、その場合の工事総額は全撤去の費用を上回ることもあります。

浄化槽を残す都合上地盤沈下等が起こるリスクがありますが、工事の際に予算がない場合などに一時的にとられることの多い手法です。

浄化槽の埋め殺し(砂埋め処分)

埋め殺し(砂埋め処分)は、解体を行わず部材や装置をそのままに地中に埋める方法となります。埋め戻しと比べても工数が少なく、撤去費用は一番安価で抑えられます。

どの方法でも最終清掃は必須

浄化槽の撤去を行う際は必ず、撤去前に浄化槽内の汚水を取り除いて内部を消毒する最終清掃を行います。これを行わない場合、工事中に汚水が流れ出て周辺に悪影響を与えることがあります。

また、汚水をそのままに埋め戻し・埋め殺しを行った場合、廃棄物処理法違反とみなされる可能性もあります。なお、最終清掃は解体業者では対応ができないため、別途で清掃業者への手配を行うことが必要となります。

これは解体業者には清掃設備が整っていないことのほか、内部の汚水は一般廃棄物扱いであり、産業廃棄物処理業者では処分ができないためです。

浄化槽の撤去費用削減に利用できる補助金

基本的に浄化槽の撤去に伴って利用できる補助金はありません。

しかしながら、地域の各自治体では、合併処理浄化槽の設置を推進しているため、利用が推奨されていない単独処理浄化槽を合併処理浄化槽に転換する工事に限り、費用の一部を負担する補助金を設けている場合があります。

補助費用や要綱等は各自治体によって異なるため、詳細は環境省のホームページやお住まいの地域のホームページをご覧ください。

参考 【浄化槽サイト】浄化槽データ 環境省 参考 合併処理浄化槽への転換費用の補助制度 千葉市ホームページ 参考 浄化槽の設置補助 町田市ホームページ

浄化槽を撤去する手順と必要な準備

実際に浄化槽を撤去する際には、以下の手順で進めていくこととなります。上記で解説したことを元に整理してみましょう。

浄化槽の最終清掃

最初に行うのは最終清掃です。どの撤去方法を行うにせよ、不法投棄とならないために工事前には必ず手配しておきましょう。どの業者を利用すればよいかわからない際は、まずお住まいの自治体に確認してみましょう。

浄化槽の維持・管理ができ、行政から許可を得ている浄化槽関連業者を紹介してもらえます。

浄化槽清掃業者
浄化槽の清掃業者は市によって定められています

画像引用:千葉市:浄化槽の維持管理

浄化槽撤去に適用できる補助制度の確認

次にチェックするのは、その自治体で補助制度があるかです。補助制度は工事の契約後には利用できないため、必ず工事をはじめる前にホームページを確認し、利用できる際は申請しておきましょう。

浄化槽撤去工事の契約・工事開始

補助金の確認が済んだら、実際の工事にとりかかります。なお、解体工事の際に浄化槽が出てきた場合、見積書の概算にない追加費用が発生してしまいます。解体工事を行う場合は、解体前の立ち会い等で浄化槽の有無をチェックしておくと予算のずれが起きづらいです。

浄化槽使用廃止届出書の提出

浄化槽の撤去が終わったら、使用を廃止(撤去)した日から30日以内に“浄化槽使用廃止届出書”を都道府県知事へ提出する必要があります。この届け出を行わなかったり、うその届け出を行ったりした場合、5万円以下の過料が発生します。

他にも浄化槽の設置の際にも届け出が必要となるほか、それらの届け出を行わなかった際にも過料が発生します。解体業者から届け出を行うよう言われることがほとんどではありますが、転換工事等を行う際は自身でも気をつけておきましょう。

浄化槽には適切な管理が必要

浄化槽には、浄化槽法に基づいた適切な管理やそれを証明する届け出が必要で、正しく管理が行われていない場合には行政からの指導が入ることもあります。

定期的な清掃や改善措置が必要なのにもかかわらず放置していた場合、浄化槽の劣化により地盤への変化や悪臭等による周囲への悪影響が起きたり、浄化槽法違反により過料が発生することもあります。

環境省のホームページにも罰則の一覧があるため、撤去工事を今すぐ行うわけでない場合であっても注意しておきましょう。

浄化槽管理者に関係する違反行為とその罰則は次のとおりです。

1.保守点検や清掃が定められた基準に従って行われていないとして、都道府県知事に改善措置や使用停止を命ぜられたにもかかわらず、この命令に違反した場合
→6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金
2.無届か嘘の届け出により浄化槽を設置した場合
→3ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
3.届け出た浄化槽の設置又は構造・規模の変更計画が不適正であるとして、計画の変更又は廃止を命ぜられたにもかかわらず、これに違反した場合
→3ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
4.技術管理者を置くべき浄化槽について、技術管理者を置かなかった場合
→30万円以下の罰金
5.行政庁から浄化槽の保守点検や清掃等に関して報告を求められたにもかかわらず、報告をしなかったり、嘘の報告をした場合
→30万円以下の罰金
6.設置後等の水質検査及び定期検査に関しての都道府県知事からの命令に従わない場合
→30万円以下の過料
7.浄化槽の使用を廃止したときの都道府県知事への届出をしなかったり嘘の届出をした場合
→5万円以下の過料
8.行政庁の立ち入り検査を拒んだり妨げたり、質問に答えなかったり、又は嘘の答えをした場合
→30万円以下の罰金
Q.14 浄化槽法に違反した場合の「罰則」とはどのようなものですか

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