【解体ニュース解説】解体現場から銅線約200kg盗難 男女2人を逮捕

仙台市 銅線盗難のサムネイル

この記事でわかること

  • 全国で金属盗難が急増している背景と、銅線が狙われる理由
  • 2025年6月に成立・公布された「金属盗対策法」の概要
  • 被害を防ぐために確認したい業者選びのポイント

仙台市の解体現場で保管されていた銅線約200kgが盗まれる事件が発生し、男女2人が窃盗の疑いで逮捕されました。

なぜ今これほど金属盗難が相次ぎ、解体現場が狙われるのでしょうか。

本記事では、警察庁の統計や2025年6月に成立・公布された「金属盗対策法」を踏まえ、銅線が狙われる理由や工事の依頼主が気をつけるべきポイントについて専門家が解説します。

ニュースの概要

  • 発生場所:宮城県仙台市太白区
  • 報道日:2026年10月13日
  • 対象:建物の解体現場
  • 事案:仙台市太白区の解体現場から銅線約200kg(時価28万円相当)を盗んだとして、男女2人が窃盗の疑いで逮捕された。2人は容疑を認めており、警察は銅線の売却経緯や犯行の詳しい手口などを調べている。

仙台市太白区の建物解体工事現場で保管されていた銅線約200kgなどを盗んだとして、村田町に住む会社員の男(25)と住所不定・無職の女(29)の男女2人が窃盗の疑いで逮捕されました。

警察によりますと、2人は共謀し、今年8月24日の午後4時頃から翌25日午前7時40分頃までの間に、仙台市太白区の建物解体工事現場に保管されていた銅線約200キロなど時価計28万円相当を盗んだ疑いがもたれています。

引用:解体現場から消えた銅線約200キロ…知人の男女を窃盗容疑で逮捕<宮城・仙台市>|Yahoo!ニュース

過去3年で約3倍に急増した金属盗難の認知件数

警察庁の統計(2024年9月公表)によると、全国の金属盗難の認知件数は2020年の5,478件から、2023年には1万6,276件へと約3倍に急増しました。2024年も上半期(1〜6月)だけで1万758件に達しており、年間2万件を超えるペースで増え続けています。

2020年から2024年までの全国の金属盗難の認知件数と検挙件数の推移を示すグラフ

画像引用:第1回 金属盗対策に関する検討会 資料|警察庁

被害品の内訳

2023年の金属盗難では、電線類への被害の集中が顕著です。

被害品の内訳を見ると、品目別では「金属ケーブル」が8,916件と全体の54.8%を占め、材質別では「銅」が51.8%に上っています。

被害総額約132億8,700万円のうち、金属ケーブルの被害だけで約8割(約109億8,100万円)に達しており、金属盗難による被害額の大部分を占めています。

2023年の金属盗難の被害状況を示す円グラフ

画像引用:第1回 金属盗対策に関する検討会 資料|警察庁

理事 中野達也

解体現場では、壁や天井を撤去する際に屋内配線や幹線ケーブルなどの銅線がまとまった量で発生します。そのため、工事中に回収した銅線が盗難の標的になることがあります。

銅スクラップは他の金属よりも高額で取引される

金属盗難で銅線が狙われる理由の一つは、取引価格が高く、売却するとまとまった現金を得られることです。

警察庁の資料によると、2023年のスクラップ価格は1kgあたり鉄が約47円、アルミニウムが約185円であるのに対し、銅は約1,131円でした。鉄の約24倍、アルミニウムの約6倍にあたり、他の金属と比べても高い価格で取引されています。

2023年の1kgあたりのスクラップ価格比較

画像引用:第1回 金属盗対策に関する検討会 資料|警察庁

なお、銅のスクラップ価格は2023年以降も高い水準で推移しています。今回の事件でも、銅線約200kgが時価約28万円(1kgあたり約1,400円)に相当しました。

2025年6月に成立・公布された「金属盗対策法」

金属盗難の増加を受け、盗品の売却を防ぐために制定されたのが「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)」です。

従来の法規制が抱えていた課題

これまで中古品の売買を規制してきた「古物営業法」は、本来の用途で使用できる物品を対象としています。そのため、解体現場で発生した切断済みの銅線などはスクラップとして扱われ、本人確認や取引記録の保管といった規制が適用されない場合がありました。

また、金属くずの取引を規制する独自の条例を設けている自治体も限られていました。そのため地域によって規制に差があり、全国一律の取り締まりが難しい状況にありました。

出典:古物営業法

第二条 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。

第十五条 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、次の各号のいずれかに掲げる措置をとらなければならない。
一 相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認すること。
二 相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書(その者の署名のあるものに限る。)の交付を受けること。
三 相手方からその住所、氏名、職業及び年齢の電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。以下同じ。)による記録であつて、これらの情報についてその者による電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子署名をいい、当該電子署名について同法第四条第一項又は第十五条第一項の認定を受けた者により同法第二条第二項に規定する証明がされるものに限る。)が行われているものの提供を受けること。
四 前三号に掲げるもののほか、これらに準ずる措置として国家公安委員会規則で定めるもの

第十六条 古物商は、売買若しくは交換のため、又は売買若しくは交換の委託により、古物を受け取り、又は引き渡したときは、その都度、次に掲げる事項を、帳簿若しくは国家公安委員会規則で定めるこれに準ずる書類(以下「帳簿等」という。)に記載をし、又は電磁的方法により記録をしておかなければならない。ただし、前条第二項各号に掲げる場合及び当該記載又は記録の必要のないものとして国家公安委員会規則で定める古物を引き渡した場合は、この限りでない。
一 取引の年月日
二 古物の品目及び数量
三 古物の特徴
四 相手方(国家公安委員会規則で定める古物を引き渡した相手方を除く。)の住所、氏名、職業及び年齢
五 前条第一項の規定によりとつた措置の区分(同項第一号及び第四号に掲げる措置にあつては、その区分及び方法)

引用:古物営業法|e-Gov法令検索

新法によって義務付けられた2つの措置

こうした状況を是正するため、金属盗対策法では段階的に規制が強化されました。

  1. 犯行用具の携帯禁止(2025年9月1日施行)
    業務などの正当な理由なく、一定の長さや機能を持つボルトクリッパーやケーブルカッターを隠し持つことが禁止されました。
  2. 特定金属くず買受業者への届出・本人確認の義務付け(2026年6月1日施行)
    銅などで構成される特定金属くずを買い取る事業者に対し、公安委員会への届出が義務付けられました。さらに、買い取り時の「売り主の本人確認」や「取引記録の作成・保存」が全国一律で義務化されています。
出典:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律

第三条 特定金属くず買受業を営もうとする者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所(特定金属くずの買受けを行う営業所をいう。第十三条第一項を除き、以下同じ。)ごとに、氏名又は名称、住所、営業所の所在地その他国家公安委員会規則で定める事項を、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に届け出なければならない。この場合において、届出には、国家公安委員会規則で定める書類を添付しなければならない。

第七条 特定金属くず買受業を営む者は、特定金属くずの買受けを行おうとするときは、国家公安委員会規則で定める方法により、買受けの相手方の本人特定事項(当該相手方が自然人である場合にあっては氏名、住居(本邦内に住居を有しない外国人で国家公安委員会規則で定めるものにあっては、国家公安委員会規則で定める事項)及び生年月日をいい、当該相手方が法人である場合にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。次条第一項において同じ。)の確認(以下「本人確認」という。)を行わなければならない。ただし、過去に買受けの相手方となったことがある者からの買受けを行う場合であって当該買受けに係る代金の支払をその者の預金又は貯金の口座への振込みにより行うときその他の国家公安委員会規則で定める場合は、この限りでない。

第八条 特定金属くず買受業を営む者は、本人確認を行った場合には、直ちに、国家公安委員会規則で定める方法により、当該本人確認に係る本人特定事項、当該本人確認のためにとった措置その他の国家公安委員会規則で定める事項に関する記録(次項において「本人確認記録」という。)を作成しなければならない。
2 特定金属くず買受業を営む者は、本人確認記録を、当該本人確認に係る買受けの行われた日から三年間保存しなければならない。

第十五条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、指定金属切断工具を隠して携帯してはならない。

引用:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律|e-Gov法令検索

被害を防ぐために確認したい業者選びのポイント

法律で買い取りの規制が強化されても、解体現場での盗難リスクは残ります。特に夜間の無人現場では防犯対策が重要です。

盗難による工事の中断や工期の遅れを防ぐため、解体工事を依頼する際は契約前に業者へ以下の3点を確認しましょう。

1. 出入口の施錠や侵入対策をしているか

建物の解体が進むと、備え付けの鍵は使えなくなります。業者には「作業終了後、現場の出入口はどのように施錠していますか」と尋ねてみましょう。

仮囲いのゲートをチェーンでしっかり固定する、出入口に重機を配置して車を入れなくするなど、具体的な対策を説明してくれるかを確認します。

2. 取り外した銅線を現場に長期間放置していないか

取り外した電気配線を道路から見える場所に置いたままにすると、格好の標的になります。「金属資材はどこに保管し、いつ搬出する予定ですか」と質問し、長期間放置しない計画か確かめましょう。

シートで覆って見えにくくする、施錠できるコンテナに入れる、週末や連休の前に必ず搬出するなどの管理体制が重要です。

3. 夜間の防犯対策をしているか

夜間の犯行グループは、光や人の目を嫌います。そのため「センサーライトや防犯カメラ(ダミーを含む)は設置しますか」と確認するのも有効です。「防犯カメラ作動中」と書かれた看板の掲示も盗難の抑止につながります。

まとめ

本記事では仙台市の解体現場で起きた銅線盗難事件をもとに、金属盗難の背景や法規制の動向、工事を依頼する際の注意点を解説しました。

記事の要点は以下の通りです。

  • 銅の取引価格の高騰などを背景に、解体現場の銅線を狙った盗難が問題となっている
  • 「金属盗対策法」により、買い取り時の本人確認などが義務化されたものの、解体現場での盗難リスクは残っている
  • 被害を防ぐため、契約前に業者へ「作業後の施錠」「資材の保管・搬出」「夜間の防犯対策」を確認することが大切

理事 中野達也

解体現場での金属盗難を防ぐには、施工業者の日頃の防犯意識が重要です。解体工事を業者に依頼する際は、費用面だけでなく「工事期間中の現場管理が徹底されているか」も意識して業者を選びましょう。

著者

中野達也

中野達也

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事
解体工事施工技士 登録番号:23130106
石綿作業主任者 修了証番号:13820
解体工事業登録技術管理者
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)研究会員
一般社団法人東京都建築士事務所協会 世田谷支部会員

静岡県出身。日本全国の業者1,640社超と提携し、約10年間で数多くの現場に関与。自身でも解体工事業登録技術管理者としての8年間の実務経歴を持つ。専門家として、テレビ番組をはじめとする多数メディアに出演。これまでに一般家屋はもちろん、マンション、ビルなど様々な建物の取り壊しに従事し、工事を行いたい施主、工事を行う業者の双方に精通している。

出演メディア
めざまし8(フジテレビ系列)、ひるおび!(TBS系列)、情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)、バイキングmore(フジテレビ系列)、CBCニュース(CBCテレビ系列)他多数

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