マンションに立体駐車場があると、維持するために多額のメンテナンス費用がかかります。ただ、立体駐車場を解体するにも費用がかかるので、管理組合のなかで解体工事を行うかどうか賛否が分かれるケースは珍しくありません。
しかし、際限なく発生し続ける修繕費を解消するためには、今のうちに立体駐車場を平置き型駐車場などへ変更する必要があります。
そこで、本記事では立体駐車場の解体費用と工事方法について、解体工事を先延ばししてはならない3つの理由と併せて説明します。
立体駐車場の解体工事にかかる費用を確認しよう
まずは、立体駐車場の解体工事にかかる金額について、業者さんによる実際の見積金額をチェックしてみましょう。
【事例1】鉄骨3階建て立体駐車場の解体工事(東京都港区)
項目 | 数量 | 単価 | 合計 |
---|---|---|---|
解体工事費 | 1式 | 1,031,000円 | |
養生費 | 420m² | 800円 | 336,000円 |
諸経費 | 140,000円 | ||
値引き | -71,815円 | ||
小計 | 1,435,185円 | ||
消費税(8%) | 114,815円 | ||
総額 | 1,550,000円 |
前面道路の幅が狭くて4トントラックが入れない場所に建つ、鉄骨3階建ての立体駐車場の解体工事です。
表に載っている養生費とは、解体工事で生じる騒音・振動・ホコリの飛散を軽減し、解体現場の近隣住民に迷惑がかからないようにするためのシートを設置する費用を指します。
【事例2】鉄骨4階建て立体駐車場2棟の解体工事(愛知県名古屋市)
項目 | 数量 | 単価 | 合計 |
---|---|---|---|
解体工事費 | 113坪(2棟) | 10,996円 | 1,242,500円 |
養生費 | 500m² | 1,000円 | 500,000円 |
スクラップ買取費用 | 一式 | -227,500円 | |
駐車場施工(アスファルト敷き) | 一式 | 828,000円 | |
諸経費 | 157,000円 | ||
小計 | 2,500,000円 | ||
消費税(8%) | 200,000円 | ||
総額 | 2,700,000円 |
立体駐車場2棟、合計113坪の解体工事です。2棟とも鉄骨4階建てで地下がなく、それぞれ17台と13台が収容可能な建物でした。
立体駐車場の解体工事後は、アスファルト舗装の平置き型駐車場を併せて施工しています。
なお、スクラップ買取費用とは、鉄骨等金属のリサイクルによって安くなった金額です。業者さんによって、値引きとしか表示しない場合もあれば、本事例のように明記する場合もあります。
【事例3】鉄骨2階建て立体駐車場の解体工事(東京都江東区)
項目 | 数量 | 単価 | 合計 |
---|---|---|---|
解体工事費 | 182坪 | 9,890円 | 1,800,000円 |
養生費 | 280m² | 1,000円 | 280,000円 |
その他(付帯工事) | 300m² | 2,500円 | 750,000円 |
諸経費 | 450,000円 | ||
値引き | -42,400円 | ||
小計 | 3,237,600円 | ||
消費税(8%) | 262,400円 | ||
総額 | 3,500,000円 |
上下ともに12台ずつ、計24台が駐車できる鉄骨2階建て約180坪の立体駐車場の解体工事です。駐車スペースに空きが目立ってきたため、更地にして土地を売却しました。
3週間弱ほどの工期が必要な解体工事であったため、人件費等を含む解体工事費が少々高額でした。
実は、紹介した事例は複数の解体業者さんから相見積もりを取っています。
実は、上記事例でも一部相見積もりを行っています。特に、事例1と3では業者さんによって見積金額に大きな差が生じました。
立体駐車場の解体見積金額の差
- 【事例1】155万円~206万円⇒51万円の差
- 【事例2】262万円~270万円⇒8万円の差
- 【事例3】350万円~572万4千円⇒222万4千円の差
立体駐車場の解体工事については、解体業者さんによって見積金額に倍近くの差が生じる場合もあります。その理由を、いくつか挙げてみます。
- 所持している重機に違いがあり、解体現場に対する相性がある
- 鉄骨の買取金額に差がある
- 職人さんの熟練度の違いで施工日数などに差が生じる
ですから、1社の見積もりだけでは判断ができません。相見積もりで見積金額をしっかり比較する必要があります。そこで、解体業者選びの際は、どうぞあんしん解体業者認定協会にご連絡ください。
立体駐車場の解体工事が可能な業者さんの相見積もりが無料でできます。紹介するのは「解体業者13の登録審査基準」をクリアした業者さんなので、工事品質についても安心です。
立体駐車場の解体工事に関しては、ぜひ「解体無料見積ガイド」をご利用ください。
立体駐車場の跡地に広がる地下空間…修復方法は3種類ある
多くの立体駐車場には、車を収納するためのピットと呼ばれる地下スペースが存在します。その場合、立体駐車場を解体撤去しただけではピットがそのまま残ってしまいます。
そのため、立体駐車場の解体工事ではピットをふさぐ方法を、以下の3種類から選択する必要があります。
- ピットを残して埋め戻す
- ピットを撤去して埋め戻す
- 鋼製床材でピットに蓋をする
各方法には、それぞれメリットとデメリットがあるので確認しましょう。
【方法1】ピットを残して埋め戻す
- メリット…工事費用とメンテナンス費用が抑えられる
- デメリット…地質によっては陥没事故が起こる危険がある
ピットのコンクリートを残して埋め戻す方法です。
ピット底部のコンクリートに排水用の穴を開け、砂を投入して締固め、仕上げにアスファルトで舗装します。ピット自体は残すので、工事費用が抑えられるのがメリットです。
ただし、ピットのコンクリートの下に排水等で空洞が生じると、陥没するおそれがあります。そのため、ピットを残して埋め戻すのを禁止する自治体も存在します。
【方法2】ピットを撤去して埋め戻す
- メリット…メンテナンス費用が不要、安全性が高い
- デメリット…工事費用がかかる
ピット自体を解体撤去したうえで埋め戻す方法です。ピットのコンクリートを残さないので空洞による陥没が起こりにくく、一番安全です。
工事費用がかかるものの、最も望ましい工法といえます。
【方法3】鋼製床材でピットに蓋をする
- メリット…工事費が抑えられてメンテナンス費用も減らせる、地下空間を利用できる
- デメリット…湿気が溜まるとボウフラ等が発生する
ピットはそのまま残し、鋼製床材で蓋してしまう方法です。
地下空間は湿気などが溜まりやすいので、対策は欠かせません。しかし、工夫次第で倉庫などとしてスペースを活用できるのがメリットです。
立体駐車場の解体工事後に生じるピットについては、上記のように様々な対処方法が考えられます。メリットとデメリット、地質などを踏まえ、管理組合で適切な方法を選択しましょう。
もはや時限爆弾? 立体駐車場の解体工事を実行すべき3つの理由
立体駐車場の解体工事においては、管理組合で意見が食い違うケースがあります。しかし、立体駐車場の管理は全国のマンションで問題となっており、問題解決を先延ばしにするのはオススメできません。
そこで、事態が悪化する前に手を打つべき3つの理由をお話しします。
【理由1】今やマンションに立体駐車場は不要
以下の理由により、立体駐車場の魅力が失われつつあります。
- 死亡事故などが発生しやすい
- 車高のある車が入らない
- 車の保有者が減ってきている
立体駐車場は機械の誤操作などによる死亡事故が多発しており、法律による取り締まりが厳しくなってきています。(駐車場法)
一方で、マンション住人の高齢化等で車の保有者は減少しています。そのため、立体駐車場ではなく平置き型駐車場でも事足りるケースが増えています。
【理由2】機械を停止させても根本解決にならない
機械を動かさない状態で使用してもメンテナンスは欠かせません。当然ながら、部品の老朽化は止まらないからです。
もし、チェーン等が劣化して破損すると、車が落下するおそれがあり大変危険です。一応、安価かつ簡単な工事で、昇降部分を完全に固定してしまう方法もあります。
しかし、小物をピットに落とすと拾えない、子供が落下する危険があるといったデメリットはなお残ります。加えて、立体駐車場の構造自体は残るので、結局最後には解体工事が必要となります。
【理由3】先延ばしにするほどお金は失われていく
維持費・管理費は変わらなくても、マンションの入居者が減少したら修繕積立金が不足します。もし、修繕積立金が不足したら、現入居者からの徴収額を上げざるをえません。
修繕積立金の徴収額が上がれば、当然ながら入居者は集まりにくくなります。
また、修繕積立金が足りずに必要なメンテナンスができなかったら、建物の資産価値減少とさらなる入居者減少を招き、負のスパイラルにおちいります。
- 入居者が減少して修繕積立金が不足
- 修繕費の徴収額アップ
- さらに入居者が減少
- 修繕費が足りなくなってメンテナンスが不可に
- 建物の資産価値が下がる
- 入居者希望者が減少
- さらに修繕費が不足する
問題解決を先延ばしにするほど、事態は悪化しかねません。
反対に、早めに立体駐車場の解体工事をすれば将来の出費が抑えられ、長期的にはかなりの節約が可能です。例えば、以下のようなケースを考えてみます。
立体駐車場の駐車可能台数…20台
1台分当たりのメンテナンス費用…12,000円/年
立体駐車場の解体工事費用…2,000,000円
上記の場合、1年当たりのメンテナンス費用は次の通りです。
12,000円/年×20台=240,000円/年
さらに、解体工事費用の200万円をメンテナンス費用24万円/年で割ります。
2,000,000円÷240,000円/年=約8.33年
つまり、8年ちょっとで立体駐車場を解体する方がお得になるわけです。
さらに、上記は大規模なメンテナンスを考慮していません。
立体駐車場を解体してしまえば、20~30年ごとの大規模メンテナンスが不要になるので、さらなる節約が期待できます。って、不要な立体駐車場は、早期に解体するのがオススメです。
立体駐車場の解体工事についてのまとめ
今回は、立体駐車場の解体費用と工事方法について、解体工事を先延ばししてはならない理由と併せて説明しました。
立体駐車場の解体工事は、後回しにするほど大損です。 そのため、不要になりつつある立体駐車場は、可能な限り早めに解体すべきです。
ただし、依頼する解体業者さんによって、立体駐車場の解体工事にかかる費用は大きな差が生じる可能性があります。
ですから、相見積もりが欠かせません。あんしん解体業者認定協会では、複数の優良業者さんを無料で紹介しています。相見積もりの際は、どうぞご利用ください。
マンションの規約や状況によって異なる場合がありますが、立体駐車場の解体工事を決定するには管理組合で約3/4以上の賛成が必要となるのが一般的です。(建物の区分所有等に関する法律 第17条)
一見ハードルが高いように見えますが、修繕積立金の節約を訴えれば合意は不可能ではありません。将来かかる負担を減らすためにも、ぜひ今から話し合いを進めましょう。