解体工事の費用・見積りに関する基礎知識
工事の分離発注について
建物の取り壊し工事を分離発注すると、工事費用を平均20~30%程度も削減できることもあります。建物の取り壊し工事の分離発注とは、住宅メーカーや工務店などに取り壊し工事も一括依頼するのではなく、それぞれ別々に分けて依頼することを言います。
「分別解体」と「分離発注」
分離発注を実際にどうやったらいいのか、ということを解説していきます。
「分離発注」もそうですが、取り壊し工事の際には打ち合わせや見積りの中にいろいろな専門用語が出てきます。まずはそれらの言葉の意味をある程度理解しておくことが、スムーズに取り壊し工事を進めていく上ではとても大切です。
理解が難しいものとして「分別解体」と今回解説していく「分離発注」があります。少し言葉は似ていますが、意味や内容は全く異なりますので、混同しないようにきちんと理解しておきましょう。
分離発注による工事の流れ
それでは、以下で具体的な分離発注による工事の工事の流れを紹介していきます。
工事業者探し
専門業者へ依頼しよう
建物の取り壊し工事はそれを専門にしている業者に依頼する方が費用を抑えることができます。分離発注を行うことで中間マージンがなくなり、コストダウンに繋がるからです。
しかし、業者の中には不法投棄をしたり埋設物をそのままにしておくような悪徳業者も存在していますから注意が必要です。工事後になって不当な追加費用を請求してくるような業者も数多く存在します。
ですからご自身できちんとした業者を見極められるか不安な方は、当協会の厳しい13の審査基準をクリアしている業者の中から選ぶと良いでしょう。
相見積りを取る
相見積もり取得がポイント
工事費用をとにかく抑えたいと思うばかり金額だけが判断基準になってしまい、「安かろう悪かろう」業者を選んでしまわないように注意が必要です。
そのためにも3社~ほど相見積もりをすることをおすすめします。他にも競争相手がいると分かれば、業者も適当な金額をふっかけてくることもないからです。
また、業者によっては得意な現場などもありますし、工事の坪単価なども異なります。ですから各社から見積りを貰ってその詳細を比較することが大切なのです。
相見積りの事例
ではここで、実際に複数社から相見積りを取得したお施主様の事例を数名紹介します。
各社の見積りにはどれくらいの金額差があったのか?またそれはどのような理由で生じたのかをご欄ください。
神奈川県藤沢市 木造2階建て住宅 46.5坪
2社の見積額の差は25万円
横浜市A社が225万円、相模原市B社が250万円と25万円の差が出ました。総額の確認だけではなく内訳もきちんと確認したところ、見積書は2社とも細かく、どちらの見積りにも安心できましたそうです。見積書の記載方法には決まりがないので、項目の立て方にも違いがありました。
簡単な図面で工事内容を確認できたA社に決定
B社の見積書は工事費と廃棄物の処分費を別々に記載していたのに対し、A社はまとめて記載してありました。また、B社は浄化槽の撤去という項目がありますが、A社は調査時に浄化槽のことを聞いていたので、特別に項目は作らずに費用に浄化槽の金額も含めています。
どちらの見積書と説明も分かりやすくて対応もよかったですが、少しでも費用を抑えたかったのと、簡単な図面で再度工事内容を確認できたことから横浜市のA社に決定しました。
東京都国分寺市 木造2階建て住宅
2社の見積額の差は60万円
A社が170万円、B社が239万円と60万円の差が出ました。2社の見積書の項目は合ってないように見えますが、書き方が違うだけで内容は一致しています。内容が一致しているという事はつまり、2社の約60万円の金額差は単純に料金設定の違いとなります。建物の取り壊し工事では十万円単位の差が出ることは珍しくありません。坪単価のわずかな設定の違いで合計金額に大きな差が出ます。
簡単な図面で工事内容を確認できたA社に決定
両社とも現地調査時の対応はとても良かったのですが、念のため近隣対応や工事の様子について協会に確認を取りました。両社とも経験豊富で住宅地での工事も慣れているそうです。
特にA社は自社で重機や車両を保有して費用削減に努めていることも知り、費用の安いA社に依頼を決定しました。分離発注や相見積もりをすることで60万円も費用を抑えた良い事例でしょう。
群馬県富岡市 木造2階建て住宅 40坪
2社の見積額の差は35万円
A社が155万円、B社が190万円と35万円の差が出ました。両者の見積書は内訳まで細かく記載されていました。内容もほぼ変わらず、現地調査の対応も両社とも良かったので、金額が最終的な判断基準になりました。結果的に値段の安かったA社に工事を依頼しました。
後期日程の差も選定判断に
B社が若干高かったのは、一部手壊し解体をする方針だったので料金が高めだったようです。手壊し工事だと工事の日数が延びるため、その分人件費などの費用が上がります。
A社は手壊しをせずに、どのように重機を入れて工事をするか、図面でわかりやすく説明してくれましたこともあり、見積金額と工期の両面でお施主さんに選ばれました。
横浜市泉区 木造2階建て住宅 23.5坪
2社の見積額の差は72万円
ハウスメーカーから紹介されたA社が約200万円、当協会ご紹介のB社が128万円と72万円の差が出ました。 B社の見積もりにはカーポート、ブロック塀、樹木の伐根が別途料金で加算されていますが、それでもハウスメーカーの見積りよりもずっと安くなりました。ハウスメーカーの紹介だと、どうしても中間手数料が上乗せされるので高くなる傾向にあります。
木造住宅が得意なことでコスト削減が可能
それでもB社の取り壊し費用の坪単価は、横浜市泉区の費用相場よりもお得でした。
B社は木造住宅を専門に取り壊し工事を行い、長いキャリアと技術がありました。だからこそ、他の業者に比べてコスト削減が容易にできたということです。
神奈川県横須賀市 木造2階建て住宅
A社とB社では21万円差
2社の相見積りを行ったところ、A社221万、B社200万の差が出ました。ちなみに、ハウスメーカーからも紹介してもらった業者があったそうですが、両社よりも高かったので候補からは外れたそうです。
業者さんをご紹介させて頂いたところ、A社400万、B社390万、C社334万で、A社とC社では60万円もの差が出ました。
工期の違いも重要ポイントに
どちらの業者にお願いするか迷ったそうですが、少しでも費用を抑えたいこととスケジュールの都合により、B社にお願いすることにしました。
少しでも工期を短くしたいお施主様の場合は、工期も重要な選定ポイントになるということですね。
現地調査
取り壊し工事では見積り時における現地調査も非常に重要です。「何を処分して何を残しておくのか」「追加費用が発生する可能性はあるのか?」「隣の家との境界はどこか」など、実際に現地で確かめないことには分からない具体的な内容を業者と共有することで、トラブルを防げるからです。
また、電話やメールだけでは分かりにくい業者の雰囲気を知ることができるメリットもあります。もしも担当者のマナーが悪いなど不安要素があった場合は、その業者に依頼しないようにすることでトラブルを未然に回避できるでしょう。
見積り比較
見積比較では、概算比較には意味がありません。見積内容の詳細をしっかりと把握し、詳細がわからなければ再度担当者に質問するくらいは必要でしょう。例えば残置物の撤去費用ひとつとっても、それが見積りに含まれているのといないのとでは負担額に大きな差が出るでしょう。
また、上記事例でもあったように、建物本体の取り壊し費用自体は低かったものの、その他、駐車場、カーポート、ブロック塀、フェンスなどの撤去費用が高くつき、最終的に見積金額が高くなることもよくあります。
見積内容に含まれている工事がどの範囲までなのかを、しっかりと確認することを忘れないようにしましょう。
工事スタート
工事が始まったら、なるべく近隣住民に迷惑をかけないように行っていくことも重要です。工事前には工事業者もお施主様も工事の工程表や菓子折りを持って近隣挨拶に伺う必要があります。
前もってきちんと近隣住民とコミュニケーションがとれていれば、万が一苦情が発生しても、大きな問題にならないケースがほとんどです。
工事では取り壊す建物の周囲を養生シートで囲んで騒音やホコリが漏れるのを防ぐようにし、道路が土砂などで汚れていれば1日の工事後には掃除して貰いましょう。