自然素材の建材を使用して特別な技法で作られた古民家は、現在では作ることが出来ない昔ながらの和の美しさがあり、手間をかけても住みたいと思う魅力があります。
古民家に住む方法の一つとして古民家移築が挙げられます。しかし、古民家移築は、一定の条件を満たした古民家と、熟練の職人の手が必要なため、ある程度の費用がかかります。
今回は古民家暮らしを検討している方へ、古民家移築とはどのように行われるのか、方法や費用、注意点をご紹介します。
古民家移築とは
古民家移築とは、伝統工法によって建てられた建築物を順序に沿って撤去して、別の場所に建て直すことです。実際に、古民家の中には、違う場所に移築されながら、何世代にも渡って住み続けられているものも存在します。
ただし、すべての古民家が移築可能なわけではなく、また移築の方法や再生の方法も様々です。主に建物全てを移築できる古民家は、金属等を使わず木と木をパズルのように組み合わせた木組みという伝統的な工法により建てられた古民家のみです。
しかし手間や費用がかかっても、今では手に入らない太くて良質な銘木で建てられた柱や梁、職人技が光る居心地の良い古民家を、希望の場所に移して住みたいと考えた時の選択肢の一つとして古民家移築という方法があります。
古民家移築の費用
古民家移築には、古民家の購入費や撤去工事以外にも費用がかかります。古民家の購入先や移築を依頼する業者によっても異なりますが、主に以下の費用がかかるケースが多いです。
- 古民家購入費用(持ち主と仲介者への謝礼金)
- 現地調査費用・図面作成費用
- 解体費用
- 部材洗浄費用
- 木材費用運搬費用
- 移築先での建物再生費用
古民家移築は、木組みの技術で建てられた古民家を、工法を理解している職人によって撤去し、場所を変えて建て直します。手作業による取り壊し費用や運搬費用・諸経費がかかるため、通常のリフォームより費用がかかる場合がほとんどです。
また、建物の一部が破損していたり、今の暮らしには合わなかったりする場合もあるため、移築前に再設計も必要です。中でも水回りを工事することが多く、システムバス・システムキッチンの工事費用が加わります。工事後のトラブルを避けるためにも、見積もりを取る際はいくつかの会社を比較して、細かく何にいくらかかるのか見積書を出してもらいましょう。
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古民家移築の方法
古民家移築には3つの方法があります。
- 解体移築
- 解体しない移築:曳家工法
- 解体しない移築:吊り上げ工法
これらの方法は、移動できる距離や解体の有無も異なります。以下でそれぞれを紹介します。
解体して移築
建物を一度解体して目的の場所に運び、移築して建物を再構築する方法です。建物をトラックに積める程度の大きさにして運ぶので、長距離の移動が可能です。一般的な解体は重機を使用しますが、移築のための解体は人力で行われます。
パズルのように組まれた木と木を順序に添って解体する技術が必要になるため、現在では限られた業者のみ請け負っています。木組みの工法を理解して解体した後、補修の必要がある部分を判断しながら組み直しを行います。
解体しない移築:曳家工法
曳家(ひきや)とは、建物をひいて移動させることで、家だけではなく文化財等を現状のまま移動するとき等に使われます。建物を基礎の部分から切り離して、そのままの状態で建物をひいて別の場所に移動させる工法です。
主に増改築・敷地の有効活用・区画整理のために用います。曳家工法にも種類がありますが、建物や基礎の下にレールを設置して、ローラーで移動するという流れで行われます。
解体しない移築:吊り上げ工法
吊り下げ工法は、建物を基礎から切り離した後、クレーン等で建物を吊り下げて目的の場所まで移動させます。曳家工法と同じように、長距離の移動には向いていません。
古民家の再生方法
古民家を解体して別の場所まで運んだ後、古民家を建て直す際の方法は、大きく分けて2種類の方法があります。
- 完全移築再生
- 部分再生
古民家の現状や移築先の状況、どのような家に住みたいかといった希望を合わせて再生の方法が決まります。以下でそれぞれを紹介します。
完全移築再生
古民家を撤去して柱や梁以外にも、構造材や造作材等の使用出来る部材の全てを移築するのが完全移築再生です。移築可能な古民家を買い取るか譲り受けて、条件を満たした土地に古民家の移築を行います。
完全移築再生には、建物の解体費用と建材や古材の運搬費用、建物の再生費用が掛かります。
部分再生
新築を建てることを前提として、古民家の建材を新築と組み合わせて再利用する方法です。古材は、古民家を譲り受けてその部材を使用する以外に、業者から購入することも可能です。丸太や柱・梁以外にも、階段や床板・壁等の様々な部分が販売しているので、組み合わせて使用することが出来ます。
部分再生では、古材の洗浄や運搬費がかさみ、新築よりも費用が高くなる場合も多いため、全体の見積もりを取ることも重要です。
古民家移築の注意点
古民家の状態や移築先の地盤や環境によっては、移築できないケースもあります。近い距離の場合には先にご説明した工法によって移動することもできますが、移築の多くは解体移築で行われます。
曳家工法での移築は、長距離の場合・河川や崖がある等といった交通の制限や、手入れされていない建物で工事に耐えられない場合などは移築をすることが出来ません。
解体移築の場合は移動での制限は殆どありませんが、移築先の地盤や建物の造りによっては移築が出来ないことがあります。そのため移築を検討して土地や古民家を購入する際は、移築可能な古民家の販売をしている業者から購入し、土地も事前に移築可能かを専門家に判断してもらうことが必要です。
古民家の使い道は移築以外にある?
古民家移築は、心地良い場所に住みたいという点以外にも、日本の家屋や伝統の継承という文化的な側面を持ちます。ただし、具体的な方法や注意点を知らないまま古民家移築を行うと後からトラブルに見舞われることもあるので、まずは情報を集めることが重要です。
もしご自身で住む予定がない古民家を所有している方は、解体費用や補助金制度、古民家を解体せずに活用する方法をご紹介しているこちらの記事もあわせてご覧ください。