古民家の解体費用 古い民家の活用法とあわせて解説

古民家の解体

古民家を保有している方の中には、これといった使い道がなく、解体を検討されている方も多いかと思います。

「購入した土地に古民家がついているから、解体して新築したい」

「相続した古民家の管理に困っているから、解体も視野に入れている」

本記事では、このようにお悩みの方に向けて古民家の解体費用について詳しくまとめています。

また、古民家を解体せずに運用する方法についても触れていますので、古民家の処分にお困りの方は本記事の内容をご確認ください。

「古民家」とは?

古民家ならではの解体費用や運用方法について詳しく知るためには、古民家の定義について把握しておく必要があるでしょう。

また、「古民家」と混同されやすい建築物に、「空き家」と「古家(ふるや)」があります。

空き家と古家は古民家と似たような名前ではありますが、これらはすべて異なる建築物を指します。

そこでまずは、古民家とはどのような建築物のことをいうのか、空家や古家とはどのような違いがあるのか、改めて確認してきましょう。

古民家の定義

一般社団法人全国古民家再生協会は、建築基準法が制定される昭和25年以前に、伝統工法によって建てられた建築物を古民家の定義としています。

ただし、一般的には築50年以上が経過している建築物のことを広く古民家といいます。

参考 「古民家」の定義について 一般社団法人全国古民家再生協会

「古民家」と「空き家」の違い

空家等対策の推進に関する特別措置法によると、空き家の定義は「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」とされています。

つまり、長期間にわたって使用されていない建築物であれば、たとえ築浅であっても空き家に含まれます。

古民家のように築年数が定義されておらず、使用者の有無が問われる点が、古民家と空き家の違いです。

参考 空家等対策特別措置法について 国土交通省

「古民家」と「古家(ふるや)」の違い

古家について明確な定義はありませんが、一般的な木造住宅の法定耐用年数である築20年前後が経過し、建築物としての資産価値がほとんど失われている古い住宅のことを指すことが多いです。

古民家に比べて対象となる住宅の築年数が浅いことや、伝統構法に限定されないことなどが、古民家と古家の違いです。

古民家の解体費用

古民家を手放す手段として、真っ先に思いつくのが“解体”ではないでしょうか?

とはいえ、古民家の解体にどれくらいの費用がかかるのか見当もつかない方も多いかと思います。

そこで、実際に当協会を介して古民家を解体されたお客様の見積りデータを一部ご紹介していきます。

また、各工事項目についても簡単に解説していきますので、古民家の解体費用のイメージが湧かない方は参考になさってください。

場所 東京都
構造 木造
広さ 40.9坪
築年数 築90年超
項目 数量 単価 金額
足場養生 180m² 550円 99,000円
入口鍵付き養生 1式 70,000円 70,000円
母屋解体 40.9坪 9,300円 380,370円
基礎撤去 40.9坪 3,000円 122,700円
樹木撤去 3m³ 2,000円 6,000円
石敷石撤去 3m³ 2,000円 6,000円
ブロック撤去 15.6m² 2,000円 31,200円
万年塀撤去 8.1m² 2,000円 16,200円
裏庭小屋撤去 1式 20,000円 20,000円
物置撤去処分 サービス
母屋処分(裏庭小屋含む) 40.9坪 13,800円 564,420円
基礎処分 40.9坪 3,000円 122,700円
樹木処分 3m³ 5,000円 15,000円
石敷石処分 3m³ 5,000円 15,000円
ブロック処分 2.4m³ 4,000円 9,600円
万年塀処分 1.3m³ 8,000円 10,400円
万年塀復旧工事 1式 150,000円 150,000円
収集運搬 23回 15,000円 345,000円
官庁届出(リサイクル法) 1件 50,000円 50,000円
重機回送 1往復 5,000円 5,000円
交通誘導員(クレームの場合別途) 0人 -
諸経費 1式 92,000円 92,000円
小計 2,172,590円
消費税10% 217,259円
合計 2,389,849円

なお、上記の見積りはあくまでも一例に過ぎません。

物件の大きさや立地条件などによって、見積り金額は大きく変わります。

古民家解体の足場養生費

足場養生費」は、解体現場を専用のシートで覆うための費用です。

解体工事中は、騒音振動粉塵が発生するため、しっかりと対策を行わないと近隣からクレームが入ることがあります。

解体現場をシートで覆うことで、騒音や振動を最小限に抑え、粉塵の飛散を防ぐことができます。

足場養生の設置は義務ではありませんが、近隣トラブル防止のため、ほとんどの解体業者が行う工事項目です。

▷解体工事の養生は義務?養生シートでわかる解体業者の質

古民家解体の母屋解体費・母屋処分費

母屋解体費」は、敷地内にある母屋を取り壊すための費用で、職人さんの人件費などが含まれます。

また、「母屋処分費」は、取り壊した母屋から出た廃材を適切に処分するためにかかる費用です。

今回ご紹介した見積りでは解体費と処分費の項目が分かれていますが、解体費と処分費を合算して「本体工事費」という1つの項目にするケースもあります。

▷家の解体費用の相場を解説

古民家解体の樹木撤去費・樹木処分費

樹木撤去費」は、庭や生け垣など、敷地内に植えてある樹木を撤去するための費用です。

樹木を撤去するためには、幹の根本から“伐採”したあと、重機を使用して地中に残った根を“抜根”します。

また「樹木処分費」は、伐採および抜根した樹木を適切に処分するための費用です。

この他にも、庭石やブロック塀など、敷地内にあるものはすべて撤去および処分する必要があるため、それぞれに費用がかかります。

▷お庭の解体費用はどれくらい?庭石・庭木などの撤去費用の目安は?

古民家の解体は、井戸撤去費など予期せぬ追加費用が発生する場合も!

解体工事では、当初の見積もりに含まれない「追加費用」が発生することがあります。

追加費用とは、見積もりを取得する時点で予測できなかった工事項目が、着工後に追加された場合に発生する費用です。

たとえば、解体工事で地中を掘り起こしていたら「井戸が見つかった」場合、見積もりで提示された金額とは別に「井戸撤去費」が発生する可能性があります。

当サイトには、井戸の解体・撤去についてまとめた記事があります。詳しくはこちらを参考にしてください。

▷井戸の解体・撤去の手順と費用をチェック

古民家の解体で利用できる補助金について

全国の各自治体の多くは解体工事に対する補助金制度を設けており、定められている条件を満たすと解体費用の一部を補助してもらえる場合があります。

補助を受けるための条件や支給金額は各自治体によって異なりますが、昭和56年5月31日以前に建てられた旧基準木造住宅を解体する場合に、数十万円の補助金が支給されるケースが多いです。

対象となる建築物に古民家が含まれる場合もあるので、念のため古民家のある地域に解体工事の補助金制度があるか調べてみるとよいでしょう。

当サイト(解体工事の情報館)でも、各自治体の設けている解体工事の補助金制度についてまとめていますので、古民家の解体を検討されている方は参考になさってください。

参考 解体費用の補助制度 解体工事の情報館

古民家に使用されている材木の買い取りについて

古民家に使用されている良質な材木は「古材(こざい)」と呼ばれており、古材買取業者に買い取ってもらえる場合があります。

古材は、経年によって生まれた特有の風合いがあることに加え、長年の自然乾燥によって強度が増していることが特徴です。

とくに、戦前に建てられた古民家の古材は希少価値が高く、重宝される傾向にあります。

買い取られた古材は、古民家カフェや古民家旅館といった古民家再生の材料や、新築に使用する材木の一部として再利用されます。

なお、古材は解体の際に1本ずつ丁寧に取り出す必要があるため、重機を使用して一気に取り壊しを行う一般的な解体業者では取り出すことができません。

古材買取の専門業者や、古材の取り出しに対応している解体業者に依頼をする必要があります。

解体前に古材の価値を知りたい場合

解体を依頼する前に古材の価値を知りたい方には、「古材鑑定」がおすすめです。

古材鑑定のプロである古材鑑定士に鑑定を依頼すれば、現時点における古材の評価額について詳細の書かれた古材鑑定書を貰うことができます。

また、鑑定した古民家の状態に応じて、専門的な知見から古材の再活用に関するアドバイスをもらうこともできます。

なお、古材鑑定にかかる費用は古民家1棟あたり3万円ほどで、鑑定にかかる期間はおよそ1週間、鑑定書の発行までにかかる期間は鑑定の終了後およそ2週間です。

参考 鑑定を依頼したい 古材鑑定士

古民家を解体して更地にするメリットとデメリット

古民家を手放したい方は、解体して更地にするメリットとデメリットを両方確認しておきましょう。

古民家を解体するメリットの1つ目としては、土地の買い手がつきやすくなることです。古民家の再利用を検討しているケースを除き、土地の買い手の多くは土地のみで購入を希望されている方が多いためです。

2つ目のメリットは、古民家の倒壊のリスクを未然に防げることです。古民家は築年数が経っているため、放置することには倒壊などのリスクが伴いますが、あらかじめ古民家を解体しておけばそのリスクはなくなります。

デメリットの1つ目としては、更地にした土地の固定資産税が上がることです。建物付きの土地は、固定資産税の減税対象となりますが、更地になることで減税対象外となります。

2つ目のデメリットは、古民家の解体費用を負担しなければならないことです。古民家とはいえ、解体には100万円前後の費用がかかることが一般的で、解体費用は売り主の負担となります。

古民家を更地にするメリット 古民家を更地にするデメリット
売却時の買い手が見つかりやすくなる 更地にした土地に税金がかかる
倒壊のリスクを未然に防ぐ 古民家の解体費用を負担する必要がある

古民家の解体以外の運用方法

ここまでお読みいただき「想像していたよりも解体費用が高かった」「歴史ある建築物を解体するのは勿体ない」と感じられた方もいらっしゃるかと思います。

使い道のない古民家を手放す方法は、解体だけではありません。保有している古民家の状態が良好であれば、希望する方に利活用してもらうことも可能です。

そこで最後に、古民家を解体せずに運用する方法について確認していきましょう。

「賃貸物件」として第三者に古民家を貸し出す

古民家を、「店舗用賃貸物件」や「DIY型賃貸物件」として第三者に貸し出す方法があります。

古民家が人通りの多い場所に建っているのであれば、古民家ならではの雰囲気が魅力的なテナント物件として役立つ可能性があります。

また、古民家が地方にある場合、地方移住を希望されている方に貸し出して、DIYによるリフォームやリノベーションを楽しみながら暮らしてもらうこともできるでしょう。

「コミュニティスペース」として地域に提供する

古民家を、地域の方々が集うコミュニティスペースとして提供する方法もあります。

間仕切りが少ないことは伝統構法の特徴でもあるので、古民家ならではの広々としたスペースで様々な催し物を楽しむことができるでしょう。

また、日本の伝統的な建物に触れる機会の少ない地域の子供たちにとっても、古民家を開放することで学びの機会を提供することができます。

古民家および土地にかかる税金について

古民家の解体や運用について最適な選択をするうえで、不動産にかかる税金(固定資産税・都市計画税)に関する問題を無視することはできません。

なお、不動産にかかる税金は、建物と土地それぞれに課されます。

ここで注意したいのが、「古民家を解体するか」「解体後の土地を残すか」によって、以下のように課税額が変わることです。

古民家が建っている状態であれば、その土地は「住宅用地」に分類され、減税の対象となる
古民家を解体して更地にすると、その土地は「住宅用地」でなくなるため、減税の対象外となる

参考 固定資産税の軽減措置(住宅用地)とは 三菱UFJ不動産販売「住まい1」

古民家を解体すれば、建物に課される税金はなくなります。

しかし、建物に課される税金は築年数によって税率が下がる傾向にあるため、古民家に課される税金は最低課税額である場合がほとんどです。

そのため、土地を更地にするよりも、古民家を解体せずに保有しておくほうが、土地に課される税金との合計が安くなるケースもあります。

また、古民家を維持管理する場合も「空き家として放置するか」「古民家を運用するか」によって、以下のように課税額が変わる可能性があります。

・古民家の使用者が不在で管理不十分だと、「特定空き家」に認定される可能性があり、建物が築年数による減税の対象外となる
・古民家が第三者によって使用および適切に管理されていれば、引き続き建物が築年数による減税の対象となる

参考 特定空き家とは NPO法人 空家・空地管理センター

保有する古民家が「特定空き家」に認定されるのを防ぐためには、古民家をご自分で使用するか、もしくは第三者に使用してもらう必要があります。

第三者に古民家を使用してもらう方法としておすすめなのが、先にご紹介した賃貸物件やコミュニティスペースとしての古民家の運用です。

古民家の解体にかかる費用についてのまとめ

本記事では、古民家の解体費用や、解体せずに運用する方法について詳しく解説してきました。

古民家を解体するか運用するか、最適な選択は人によって異なります。

古民家の解体後、土地を更地のまま保有してしまうと、税金が高くなる可能性があるため注意が必要です。

古民家を保有し続ける場合は、管理が行き届くよう第三者に貸し出すか、ご自分で定期的に使用する必要があるでしょう。

古民家の処分について後悔のない選択ができるよう、本記事が参考になれば幸いです。

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