解体工事って、さまざまな手続きがあって大変ですよね。
みなさんは、解体工事を終えた後にも手続きがあるのはご存知ですか?
解体工事後には、1ヶ月以内に行う必要がある「建物滅失登記」の手続きがあります。
本記事では、「建物滅失登記とは何か」「かかる費用」「建物滅失登記の流れ」などについて説明します。
解体工事をお考えの方は、ぜひご参考ください。
建物滅失登記とは
建物滅失登記(たてものめっしつとうき)とは、登記されている建物を取り壊したときに行う手続きのことです。
建物は、法務局で建物の登記がされています。そのため、建物を壊すと、存在が消滅したことを登記する必要がでてきます。手続きをしなければいつまでも建物が存在することになってしまうため、原則、建物を解体してから1ヶ月以内に建物滅失登記を行う必要があります。これは、不動産登記法第57条に定められています。
第五十七条(建物の滅失の登記の申請
1.建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
建物滅失登記を行わなかった場合
建物滅失登記は申請義務です。そのため、申請を行わなかった場合、10万円の過料に処されることがあります。
また、払わなくてもよい固定資産税を払うことになる恐れも。なぜなら、建物の固定資産税は、1月1日時点で固定資産税課税台帳に登録されている内容を元に課税されるためです。
その他にも、建物滅失登記をしないと土地を売却できなかったり、金融機関からお金を借りることができなくなったりといった、デメリットがあります。
建物滅失登記は、建物の解体後、すみやかに手続きを行うのがおすすめです。
滅失登記後の固定資産税について
建物を解体すると滅失登記をする必要があります。その時に、「固定資産税はどうなるんだろう?」と心配する方が多くいらっしゃいます。
建物を解体すると、建物の固定資産税は下がり、土地の固定資産税は上がってしまいます。そのため、実質固定資産税は上がってしまうケースが多くなります。
建物の固定資産税は下がり、土地の固定資産税は上がる
なぜ、固定資産税が上がってしまうのかというと、建物が建っている土地の場合、土地にかかる固定資産税が軽減されるという特例が存在するからです。しかし、解体工事後は住宅用地にかかる固定資産税特例措置という特例が受けられなくなるため、固定資産税が上がってしまうのです。
ですから、正確にいうと固定資産税が高くなるのではなく、今まで受けていた特例が受けられなくなることで固定資産税が通常の金額に戻るため、結果的に固定資産税が上がっているように感じてしまうのです。
固定資産税の算出方法
古くなった住居の固定資産税を払わないですむように解体工事をしたのに、結果的に高い固定資産税が課税されたと感じる方がいらっしゃるようです。実際に住宅の取り壊しを行う前に、どれくらい税金が変動するか、固定資産税の算定方法を考えてみましょう。
建物の固定資産税
住宅をはじめとした不動産の所有には、固定資産税が毎年都道府県から課せられます。建物の固定資産税は固定資産評価額の1.4%と決まっていますが、建物を壊した部分に関しては、評価額が下がります。もし建物を全て壊すのであれば、建物の固定資産税は0円となります。
土地の固定資産税
土地の固定資産税も同様に、評価額の1.4%と決まっています。しかし、宅地内に住宅が建っている場合は、特例が適用されます。「住宅用地の課税標準の特例」という法律です。この特例は、住宅の敷地で200m²(約60坪)までを小規模住宅用地とし、課税標準を1/6にしています。また、200m²から床面積の10倍までの一般住宅用地については、課税標準を1/3とする制度です。建物に特例制度が適用されていたとすると、この建物を取り壊すことにより、この制度の適用から外れるため、土地の固定資産税が最大で6倍になってしまいます。
住宅用地で200m²(小規模住宅用地)の場合
固定資産税=固定資産税評価額×1/6×1.4%
住宅用地で200m²を超える部分(一般住宅用地)の場合
固定資産税=固定資産税評価額×1/3×1.4%
固定資産税の賦課期日
税金は規定日によって、課税されます。例えば、身近な自動車税をみると、賦課期日は4月1日で、納期は5月です。つまり、4月1日時点で自動車を所有していれば、4月1日以降に名義変更を行っても、4月1日時点の所有者に法律上の納税義務があります。
ですから、中古車を購入したり、車を下取りに出す場合には、その日付に注意が必要となります。4月1日以降に中古車を購入する場合には、法律上は購入した年度の自動車税の納税義務はありません。しかし、4月1日以降に車を手放しても、その年度分の自動車税の納税義務はなくならず、抹消登録されない限り年額全てを納付する必要があります。
同じように、建物や土地は1月1日現在の所有で納税が決まりますので、年度の途中で売買等があって所有者が代わったとしても、1月1日現在の所有者として登録されていると、その年の4月1日からの1年度分の税をすべて納付しなければなりません。
1月1日時点(賦課期日)に建物が滅失されているかどうかで決まりますので、解体時期を調整することによって節税をすることが可能となります。工事後の土地の活用がすでに決まっている場合は、調整が難しいかもしれませんが、決まっていない場合には、工事時期を専門家や工事業者と相談するとよいでしょう。しかし、他の方も同じように考えて、財産処分として年末にかけて解体工事の依頼が増えてくる傾向があります。駆け込みでの依頼は解体業者が対応できない場合もありますので、注意してください。
ただ、着工時点・完工時点のどちらが「滅失」に当たるかは、自治体によって判断が異なることもあるようですので、その点も確認するとよいでしょう。賦課期日(1月1日)において住宅を建替え中の場合、条件に該当するものであれば、固定資産税特例措置が受けられるようです。建て替えの際の固定資産税の算定についても、各自治体に確認することをおすすめします。
建物滅失登記と固定資産税にかかわる実例
この事例では、家付きの土地を購入した方の固定資産税についてみていきます。以下は、とある質問・回答事例を簡易的にまとめたものです。
Q.新築一戸建てを建てるために、古家付の土地を購入しました。
その古家は後に取り壊し、新しい家はまだ建てていません。そんな中で土地の固定資産税・都市計画税の納税通知書が届きました。土地は住宅用地ではなく、非住宅用地として評価されていたため、評価額に軽減措置はありませんでした。しかし、少し調べてみたら、建て替えにより一時的に住宅がない場合には、建て替え前後の所有者が同じであれば、住宅用地として評価されると記載されていました。
自分の場合、古家付きの土地を購入したので、偶然一時的に建物が無いだけです。そのため上記の本に記載されているケースに該当し、土地は住宅用地として評価されると推測しています。しかし土地は住宅用地として評価されていませんでした。これは新築して不動産登記が完了した後に、払いすぎた固定資産税は戻ってくるのでしょうか?それとも、住宅用地として評価されなかったのは税務署の間違いでしょうか?
A.当該年の1月1日時点に建物がなかったとして、非住宅用地として課税されたのだと思います。
「家の建て替えにより一時的に住宅が無い場合には、建て替え前後の所有者が同じであれば、住宅用地として評価される」というのは「建て替え特例」と呼ばれるものです。これは家を建て替えた人が偶然1月1日を跨いでいるかいないかで固定資産税に税額差が生じるのを避けるために制定された制度です。ただし、建て替え特例は地方税法には規定がなく、各自治体に要件が任されています。
私が勤務している自治体では要件に、「土地の納税義務者が2年連続で同一であること」「建物の滅失の翌年3月31日までに建物の建築、もしくは建築確認申請が提出されていること」というものがあります。
今回の質問者様の場合、平成21年の納税義務者は土地も家屋も売主で、平成22年の納税義務者は土地のみ質問者さまです。賦課期日を基準にすると、質問者様は平成22年から「新しく」土地の納税義務者になっただけで、質問者様が「建替えられた」わけではない、というのが事実になります。また、現在新築も着工していないということで②でもアウトです。
他の自治体のことは分かりかねますが、おそらく「建替え」については同じような定義だと思います。市役所に「更地で課税されたのだが、うちの場合は建替え特例は効かないのか」と問い合わせてみるとよいと思います。
この事例の中では、建て替え予定で家付きの土地を購入した方からの質問で、固定資産税の賦課期日には建物は実質ないものの、住宅用の土地として評価されないのかという点について確認しています。
回答者の方からもあるように賦課期日に建物がなくても、建て替えとしてみなされれば、建て替え特例として適用されることもあるようです。条件に適用されるのかは、自治体によっても判断が異なることもあるようですが、建て替え特例が認められれば、家の不動産登記がされた後でも、払いすぎた固定資産税が戻って来る可能性があります。情報収集しつつ、ご自身のお住まいの地域で確認されることをおすすめします。
建物滅失登記の申請方法
建物滅失登記は、土地家屋調査士、司法書士が委任を受けて行います。依頼主が必要な書類を揃え、土地家屋調査士、司法書士に渡します。士業に依頼することにより、自分で書類を書いたりする手間は省けますが、委任するには費用がかかります。
代行してもらう場合
土地家屋調査士に依頼をする場合の代行金額は4〜5万円程度が目安と言われており、司法書士に依頼をする場合は、それよりも高くかかります。
また、同じ士業に依頼をする場合でも、ハウスメーカーや不動産仲介業者から紹介される、指定される土地家屋調査士、司法書士は一般的にかなり高めに費用が設定されています。
なぜならば、相見積りで比較されることがないため、費用を抑える必要がないからです。
不動産登記の専門家である土地家屋調査士や司法書士には、これらの専門家を束ねる団体があります。土地家屋調査士の団体である「日本土地家屋調査士会連合会」のホームページでは、業務報酬統計資料を公表しています。
「業務報酬資料」の資料によると、全国の平均値は44,577円でした(平成25年度実施報酬に関する実態調査)
司法書士の団体である「日本司法書士会連合会」では、このようなデータは公表されていません。表示登記、建物滅失登記、土地分筆登記やそれらの変更登記は土地家屋調査士、所有権に関わる事、保存登記、移転登記などは司法書士の業務となります。 司法書士の方が報酬は高いことが一般的です。
建物滅失登記であれば土地家屋調査士に、他の所有権に関わることも含まれるようだったら司法書士にと、登記の内容によって確認したり、見積をとると、納得して依頼することができます。
もっと、費用を抑えたい方は、個人で申請することができます。他人の所有している建物については、依頼を受けて代理人として登記申請は、土地家屋調査士等でなければできませんが、自己所有の建物については、個人で申請することができます。建物滅失登記は、簡単な登記であり、個人で申請することが多い登記の1つとなっています。
自身で手続きを行う場合
建物滅失登記は、以下の5つの手順で進めていきます。
- 管轄の法務局を探す
- 申請に必要な書類を準備する
- 解体業者から必要書類を入手する
- 必要書類を法務局へ提出する
- 建物滅失登記が完了し、登記完了証を受け取る
管轄の法務局を探す
建物滅失登記は、その建物があった地域を管轄している地方法務局や出張所に申請します。管轄は、法務局のホームページから確認できます。
「管轄のご案内」のページでは、都道府県の管轄一覧から地方法務局を探せます。解体したい建物がある地域の法務局をクリックしてみましょう。
例えば、神奈川県中区なら横浜地方法務局(本局)が管轄になりますが、横浜市神奈川区なら神奈川出張所で建物滅失登記を申請することになります。
同様にして、あなたの建物の管轄の法務局を確認してみてください。
申請に必要な書類を準備する
次に、法務局へ提出する書類の準備を進めていきましょう。
自分で用意しなければならない書類は以下の4点です。
- 建物滅失登記申請書
- 住宅地図
- 建物滅失登記申請書のコピー1部
- 委任状(申請を第三者に委任する場合のみ)
建物滅失登記申請書は、法務局でもらえるほか、法務局のホームページからもダウンロード可能です。
なお、建物滅失登記申請書には、不動産番号・所在・家屋番号・種類・構造・床面積などを記入する必要があります。これらがわからない場合は、登記事項証明書に情報が記載されているため、手元に用意しておくと便利です。
登記事項証明書は法務局の窓口で受け取れるほか、オンライン申請もできます。手数料は以下の通りです。
- 窓口で交付請求する場合:600円
- オンライン請求して郵送で受け取る場合:500円
- オンライン請求して最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取る場合:480円
申請後は、住宅地図をもとに、法務局の担当者が現地を確認します。用意する地図は、インターネットの地図を印刷したもので問題ありません。建物がなくなった場所に、印をつけておきましょう。
また、建物滅失登記申請書のコピーも必要となります。コピーを1部取っておきましょう。
親族や司法書士・土地家屋調査士などの第三者に建物滅失登記を委任する場合は、委任状が必要となります。
解体業者から必要書類を入手する
次に、解体業者に依頼して、以下の3点の書類を用意してもらいましょう。
- 建物滅失証明書(取り毀し証明書)
- 解体業者の印鑑登録証明書
- 解体業者の資格証明または会社登記事項証明書
「建物滅失証明書」は「取り毀(こわ)し証明書」とも言われることもありますが、同一の書類です。これらは、解体工事を実施した解体業者から入手できます
建物滅失証明書には「建物の情報」「建物が滅失した理由」「所有者の情報」「解体業者の情報や実印」などが記載されています。
また、解体業者の印鑑登録証明書と会社登記事項証明書は解体工事を依頼した業者から入手できます。建物滅失証明書(取り毀し証明書)と一緒にもらえるか確認してみてください。
必要書類を法務局へ提出する
書類の準備ができたら、順番に重ねて左綴じ(ホチキス留め)して、法務局の窓口もしくは郵送にして提出してください。郵送する場合は、封筒に「不動産登記申請書在中」と記載し書留郵便により送付しましょう。
書類提出時の注意点やポイントは、以下の通りです。
- 書類のサイズはA4で、紙質は長期間保存できる丈夫なもの(上質紙など)にする
- 書類の文字はパソコンで入力する、もしくは消えない黒ボールペンなどで記載する
- 書類を郵送しても、修正時には法務局窓口へ出向かなくてはならないため、時間に余裕がある場合は直接窓口へ提出したほうが安心
建物滅失登記が完了し、登記完了証を受け取る
提出書類に不備がなければ、建物滅失登記が完了します。建物滅失登記が完了すると、法務局窓口で「登記完了証」が交付されます。なお、登記完了証の交付を郵送で希望する場合は、宛名を記載した返信用封筒と書留郵便のための郵券を、法務局宛の書類に同封しておきましょう。
建物滅失登記を自分で行う場合の手順は以上となります。
司法書士や土地家屋調査士に委任すると4〜5万円の費用が発生してしまうため、少しでも費用を抑えたいとお考えの方は、ぜひこの記事を参考に手続きを進めてみてください。
遠方にいても手続きは可能
建物滅失登記は、当該物件が建っている地域を管轄している法務局に申請を行わう必要があります。そのため、「遠方だから、なかなか現地まで足を運んで手続きなんてできない」と言われるケースもあります。
そのような場合には、郵送もしくはインターネット上での手続きができます。ただ、インターネット上の手続きについては聞くところによると実際にはまだまだ発展途上のサービスで、少しわかりにくいところが多いようです。そのため、もしご活用頂くとすれば、郵送での手続きがおすすめです。
この方法を活用すれば、全国どこに住んでいてもご自身での滅失登記申請が可能になり、費用削減が可能です。
建物滅失登記が行われていない不動産を購入・売却する場合の対応
建物解体後のその土地のご利用の予定は様々あるかと思います。「新築を建てる」、「更地で売却をする」、「駐車場にして賃貸する」、「土地を貸し出す」など、いずれの用途でも「建物滅失登記」は必要となります。ですから建物滅失登記は、そのままにしておかず建物滅失登記の申請を行ってください。
買主が、更地の状態で購入した土地で建物滅失登記がされていなかった具体的な事例をみてみましょう。
更地を購入する場合
建物滅失登記に付いて教えて下さい。
相続した土地(現況更地)に建物を建てようとしたところ
登記上そこには建物が建っている事になっていました。
当方には何の資料もありません。
滅失登記をしなければならないらしいのですが
手続きは素人には難しいでしょうか?
また頼むとしたら、誰(司法書士等)に頼めば良いのでしょうか?
この事例のポイントは、更地の状態で購入した土地でしたが、建物滅失登記がされていなかったということです。買主は、新築を建てる予定で更地を購入しています。事前に滅失登記に関する特別な契約がなければ、このような場合は売主の負担になります。もしかしたら、売主は建物を壊した後に、建物滅失登記を行う必要があることを知らなかったのかもしれません。
家付きの土地を購入する場合
滅失登記、移転登記について。
今回、古家付の土地を購入する事になりました買い主です。古家は引き渡し後、すぐに解体して、新築家屋を建てる予定です。流れとしては、①引き渡し → ②古家の解体 → ③古家滅失登記 → ④新築家屋を建築となるみたいです。
そこで質問があります。古屋は売り主名義になっています。今回のような場合、普通土地の引き渡しと同時に古家も引き渡されることになりますので、古家の所有権は一旦買い主に移転登記しなければならないのでしょうか。
どうせすぐ解体するので、引き渡し後に売り主名義のまま、解体・滅失登記ができますか?それとも、一度古家の所有権を買い主に移転登記してからしか無理なのでしょうか?古家の所有権移転登記ってお金かかりますよね?どうせすぐ解体するためお金をかけずに行いたいです。ちなみに土地建物共に融資を受けますで、土地建物共に銀行の抵当権がつきます。
この事例では、現状渡しが条件となっているようです。一番おすすめの方法は、所有権移転登記をすませてしまう方法です。自分所有の建物であることが登記簿上はっきりしますので、売主の都合で何かするというようなことはありません。その代わり多少の登記費用と登録免許税が必要となります。古屋であれば、建物の評価も低く、登録免許税額も少なくてすむかもしれません。
新築を建てる前提で土地を購入していますので、このような古い家のある土地を購入した取引の時には、古屋の所有権移転登記を省略することもあります。所有権移転登記にかかる費用は削減できますが、一方でリスクを考えておく必要があります。
どのようなリスクがあるかというと、建物は売主名義にて残るため、売主から第三者へと所有権移転登記を行ったりすることが可能となります。もし第三者に所有権移転登記がなされてしまうと、滅失登記ができないということが生じる恐れがあります。
所有権移転登記を行わない場合には、売買契約の対象を土地だけでなく建物についても行い、登記の際に作成する「売渡証書」にも土地建物の両方を明記しておき、実際には土地のみ所有権移転登記を行ないます。建物を記載するのは、実体上は所有権が買い主に移転しているということを明記するためです。また、建物滅失登記の委任状を売主から預かっておきましょう。
第三者に所有権移転登記がなされてしまい、建物滅失登記ができない事態になることは少ないとは思われますが、そのようなことはない大丈夫という保証はないので、リスクを回避したいのであれば、建物についても所有権移転登記を行うほうがよいでしょう。
これまでの2つの事例は、買主の側から見てきました。最後に、売主からみた古家付き中古住宅の売買方法について考えてみましょう。
家付きの土地を売却する場合
古家付き中古住宅を売却するのですが、買主は新築する予定です。引渡し日に、建物は移転登記せずに、私名義のまま滅失登記をする予定です(登記費用、解体費用は買主です)。このような売買方法は一般的なのでしょうか?解体終了までに事故があった場合とかの責任は、私になることはないのでしょうか?
一般的かどうかというと、買主へ引き渡した後に、売主の名義で滅失登記をするということなので、このような例もありますが、望ましい方法とは言えないでしょう。一番おすすめの方法は、まず、土地付き中古住宅の売却をしてから、取引終了後に買主が、建物を登記せず解体することです。売主にとって、建物の解体、滅失登記等の記載のない単純な契約であり、取引が終了してから、買主が自分の所有物になった建物を解体し、滅失登記を行います。建物の解体の中でおこりえる問題や責任は、買主が処理することになります。
取引はシンプルにしたほうが、リスクを減らすことができます。しかし、今回は買主からは費用を負担するので、建物を解体してほしいとの要望がだされています。買主の要望をふまえて契約すると契約事項が複雑になり、責任負担も生じることがあり得るということを、ある程度考えておく必要があります。
なぜ、買主は自身で建物滅失登記をしたくないのかを考えると、もしかすると、買主は、建物の所有権移転の登記費用を負担したくないとか、金融機関との融資の内容などの理由から、費用負担しても、売主に建物を解体してほしいと要望しているのかもしれません。
リスクをなるべく回避するためには、買主が滅失登記することが一番良いのですが、買主の要望にそって売主が滅失登記する場合には、契約書に解体工事は買主にて行うことや解体工事にかかる費用と責任は買主にて負担すること、売主には一切関係しないことの取り決めを契約書に記載するとよいでしょう。
解体工事にかかる責任に関しては、解体工事中に解体工事業者が隣の建物を損傷するなどの損害賠償等の問題と、解体中または解体後に、買主から契約を解除されるケースが考えられます。
解体工事中の損害賠償は基本的には解体工事業者で対応してもらいます。しかし、悪徳解体工事業者にあたると、対応が遅かったり、対応できない(しない)場合もありますので、信頼できる解体工事業者かどうかを、しっかり調べることが大切です。とはいっても、解体工事業者を選ぶのは買主になると思われますので、売主が直接できることは、この件に関してはないかもしれません。
もう1つの解体中、解体後の契約解除に関したケースは、損害賠償や違約金について取り決めをしておくとよいかもしれません。本当に古い中古住宅のため解体しないと売買できない物件だとしたら、解体してもあまり問題ないかもしれませんが、まだ中古住宅として売買できる物件であれば、価値のある建物を壊すことになります。このようなケースのことも考え、建物解体前と解体後で違約金に差をつけるなど、契約内容を売主、買主とともによく話し合うとよいでしょう。
まとめ
建物滅失登記は、専門家である土地家屋調査士に依頼することができますが、費用が4〜5万円もかかってしまいます。
費用を抑えたい方は、自分で手続きをすることにより、低い金額で建物滅失登記を行うことが可能です。本記事を参考に、必要な書類をまとめて、登記申請書を作成し、地域の法務局に提出してみましょう。
提出は、持参提出の他に、郵送や電子申請もありますが、電子申請はソフトをダウンロードしたり、電子署名(ICカード)が必要だったりしますので、注意が必要です。