昨今の解体業界では熾烈な価格競争が問題視されています。
解体工事は「壊すだけの工事だから安いはずだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、30坪ほどの一般的な木造家屋であっても100万円ほどの費用がかかります。相場を大幅に下回る悪徳業者に解体工事を依頼して、裁判沙汰のトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。
こちらのページでは、解体業界の今日までの変化と今後の問題点、そして当協会の問題解決への取り組みについて記載しています。
ミンチ解体から分別解体への移行
平成14年に建設リサイクル法が施行され、ミンチ解体が違法になった
分別解体とは、建物の建材を品目ごとに分別しながら取り壊す解体工法を指します。重機で建物本体を取り壊す前に、屋根や内装材等を人力で撤去する必要があります。
対してミンチ解体は、建物の屋根や内装等を事前に撤去することなく、重機で一気に解体してしまう工法です。建材は品目ごとに分別することなく産業廃棄物の処理場へ持ち込みます。
平成13年までは、ミンチ解体が主流でした。理由は、手間が少ないため短時間で安価に解体工事が行えたからです。
しかし、平成14年に廃棄物の発生量の増大による環境破壊を危惧し「建設リサイクル法」が施工され、廃棄物のリサイクルが困難となる「ミンチ解体」は原則違法となりました。
分別解体への移行で解体コストは高くなった
分別解体では、解体現場にて廃棄物を品目ごとに分別する作業が必要となります。例えば、屋根、内装材、外装材、窓や冊子などは躯体を重機で取り壊す前に手作業で外さなければなりません。
一般的な木造住宅の解体では、重機解体前の手作業は3名で2日ほどを要します。重機による解体作業中にも、廃材の細かな分別作業が行われます。
また、廃材は品目別に異なる産業廃棄物処理場に搬入するケースがほとんどです。運搬コストは運搬回数と運搬距離に比例して高くなります。ですから、従来のミンチ解体に比べ分別解体は解体コストが高くなります。
費用を抑える企業努力
解体業者は、分別解体に変わることによって増加した費用を抑えるために、工事期間を短くする工夫をして人件費を削減したり、産廃処理費用が安価な処分場を探したり、1台の重機をより多くの現場で使用できるよう工程を工夫したり努力を尽くしています。
解体工事コストは日増しに高騰している
産業廃棄物処理費用の高騰
産業廃棄物処理費は上昇し続けています。上昇している理由は、最終処分場のゴミ受け入れレベルが限界に達しつつあるという根本的な課題があるからです。近年の発表では、最終処分場の残余年数は全国平均で16.4年とされています。
よって、今後も産業廃棄物処理費は上昇し続ける可能性が非常に高く、根本的な課題が解決しない限り安価になることはないでしょう。
人件費の高騰
解体業界においても、最低賃金の引き上げに伴い人件費は上昇しています。
また、建設業界は若者離れが進行し慢性的な人材不足も発生しており、経験豊富な重機オペレーターなど優秀な人材への需要が高まったことにより人件費が上昇しています。
加えて、近年の働き方改革によって、事業者は労働環境の改善を行っています。例えば、年5日の有給休暇義務化により、従業員ひとりあたりの年間労働時間は減っている状況です。
石綿障害予防規則の改正による解体コスト高騰の懸念
去る令和3年4月1日、新たに石綿(アスベスト)障害予防規則の改正が施行されました。令和5年10月には、撤去工事の事前調査は有資格者が行う事が義務化される事も既に決定しています。
石綿規則法改正により、今後は取り壊しも含めて人件費や、書類作成や管理といった諸経費、石綿(アスベスト)処理費の高騰が懸念されています。
地方自治体によっては、すでに見回りや解体業者への指導を強化しており、その影響で解体コストは上昇傾向にあります。
悪徳解体業者の2大手口
解体費用を抑えたいニーズは強まる
国税庁の民間給与実態調査によると、2019年の日本人平均年収は436万円です。去る2007年の平均年収は437万円でした。
12年の間に消費税率や保険料が上昇しているので、実際に使えるお金は少なくなったと言えます。また、新型コロナウィルスの蔓延による経済状況の悪化も手伝い、消費者の節約志向は強まりました。
不要となった建物の解体工事についても、発注者のできるだけ費用を抑えたいというニーズは強まる一方です。
真っ当な解体業者が企業努力を重ねて、解体費用削減に取り組んでいるのにもかかわらず、一部の悪徳業者は別の方法で簡単に費用を抑える方法を有しています。それは大きく分けると2つあります。
不法投棄
1つ目は、法律を犯して処分費用を掛けずに廃棄物を処分する方法です。
これは一般的に「不法投棄」と呼ばれるものです。近年では、処分場と結託してマニュフェストを改ざんするなど手口が巧妙になってきました。
解体業者が廃棄物を違法に処分すると、依頼者様も罪に問われる可能性あることをご理解ください。そのため、金額だけで解体業者を決める行為は大変危険です。
安価な見積金額で契約し追加費用を請求する
2つ目は、他社よりも安価な金額で契約をしてから、工事開始後に追加費用として請求する方法です。
解体工事では着工前に判断できない地中埋設物などの別途見積りが必要なものが存在します。一般的には、依頼者様が現物確認を行い見積り金額に納得した段階で撤去作業に入ります。
しかし、事前報告をせず作業が終わった状況で不当に高額な追加費用の請求をしたり、無いものをあったかのように追加請求をしてくるなど、悪質な請求事例も増加しています。
解体工事を依頼する側の立場として出来るだけ費用を抑えたいと思うのが当然です。不当な方法で仕事を獲得していく悪徳業者が増えることによって、清廉潔白な仕事をしている解体業者に仕事の依頼が来なくなり、このままではいずれまともな解体業者がいなくなってしまうという事態に陥ります。
このような解体業界の問題を根本から解決するために、あんしん解体業者認定協会は様々な活動を行っています。
あんしん解体業者認定協会の活動内容
すべてのお客様に「あんしん」な解体工事を
この業界の現状を変えたい。そのために、素晴らしい解体業者とお客様が出会える場を作りたい」当協会は、この思いにより設立されました。
「あんしん解体業者認定協会」は法令遵守で廉潔な解体業者を認定することにより、工事の依頼者様が「あんしん品質」「あんしん価格」な解体業者を見極めることが出来る環境を整えていく、といった活動を行っています。同時に、正しく適切な工事を行う解体業者を増やす活動も行っております。
また、実際に解体工事を依頼しますと、予期せぬ問題が発生することがあります。
問題になりやすいのは、現場の職人のモラルや、近隣住民の方々とのトラブルです。あんしん解体業者認定協会は、このような問題が起こらないように、職人の教育や顧客対応、工事品質、近隣対応などのルールを定め、「あんしん品質」「あんしん価格」の解体業者を増やすためのサポート活動も行っております。
主な活動内容
優秀な解体業者の認定
独自の審査基準をクリアし、施主様から高評価の解体業者を認定
啓蒙活動
解体工事の品質、顧客サービス向上のための解体業者への情報提供
解体工事の相談窓口の運営
解体工事に関するあらゆるご相談やお悩みにお答えしています
解体業者のご紹介
完全無料で解体業者のご紹介、工事完了までサポートしています
メディアへの情報発信、取材協力
撤去工事の専門家として多くのメディアに取材いただいています
解体業者向けの講座、試験の実施
一般建築物石綿(アスベスト)含有建材調査者の講習・試験も実施しています