家の撤去工事の追加費用では定番?!アスベスト除去費用で最低限知っておくべきこと

アスベスト

住宅の解体工事では、建物の壁や屋根にアスベストが含まれていると「追加費用がかかる」と言われるケースが多々あります。

本記事では、「アスベストとは一体どんなものなのか」「除去費用はどれくらいかかるのか」「トラブルが起きた場合どうすればいいのか」について詳しく解説していきます。

住宅の解体工事のトラブルで最も多くみられるのが、工事中に施主の了解なしに追加請求が加えられ、見積りと実際の請求金額が違うといったトラブルです。そして次に多いのが、不法投棄やアスベストの処理に関するトラブル。

適当に解体業者を選んでしまうと、このような思わぬ事故を引き起こしてしまうかもしれません。

解体工事をお考えの方は、アスベスト除去で最低限知っておくべき知識を学び、来るべき工事に備えましょう。

アスベストって何?

アスベストは石綿(いしわた)とも呼ばれます。保温性や断熱性、吸音性に優れた繊維状の物質です。ひとつひとつの繊維はとても小さく軽いため建物のさまざまな場所で使用されていました。

しかし、アスベストは長期間にわたって吸い込むと肺癌などの病気を引き起こす恐れがあるということで、昭和50年から徐々に使用が禁止されていき、平成18年に全面禁止となりました。アスベストは壁面内に使われているだけなら被害はありませんが、住宅の解体工事の時はどうしても飛散してしまいます。そのため、アスベストは特殊な方法で除去しなければなりません。

人体にとって有害

アスベストは肉眼では確認出来ないほど極めて細い繊維からなっています。そのため、飛び散ると空気中に浮遊するので、人間の呼吸によって肺に吸い込まれやすい特徴があります。

アスベスト繊維は丈夫で変化しにくい性質なので、吸い込まれたアスベスト繊維は肺の中に長く留まります。軽くて丈夫という建築素材にとっての長所が、体内に入った途端に裏目に出てしまうのです。その結果、肺の繊維化が進み肺がんや悪性腫瘍の発生などの病気を引き起こす事に繋がります。

アスベストを吸い込んだ影響で実際に発症する恐れのある病気は、以下の通りです。

発症する恐れのある病気
  1. 中皮腫:胸膜や腹膜、心膜などに出来る悪性の腫瘍。他の悪性腫瘍に比べても、人体への影響は深刻。
  2. 肺がん:肺に出来る悪性の腫瘍(がん)。特に喫煙との相乗効果で発症率は極めて高くなる。
  3. 石綿肺:肺が線維化してしまう病気。工事現場の作業員などが、アスベストを大量に吸い込んだ時に発症する。
  4. びまん性胸膜肥厚:肺を覆う膜が炎症を起こす病気。びまん性胸膜肥厚が発症する多くの場合は、肺だけではなく肺壁も炎症を起こしている。

アスベストが多用されていた理由は、「単体で引っ張り強さ、不燃性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、耐久性、セメント等との親和性」など多くの長所を持っており、かつ経済性に優れていたからです。

アスベストは日本だけでなく、世界でも使われていましたが、現在では多くの国で、日本と同じように規制がかけられています。

EU加盟国(25ヶ国)では、2005年1月から、日本においても2006年9月から使用等が禁止になりました。アメリカでは、2003年8月に石綿紙、新規製品等への使用は禁止されていますが、建材、摩擦材等への使用は認められています。なお、中国では禁止されていません。

引用:一般社団法人JATI協会

規制された理由は、健康障害を起こすリスクがあるからです。WHOの報告によると、アスベストの繊維は、悪性中皮腫、肺がん、じん肺の原因になるといわれています。

石綿による健康被害の特徴は、石綿を扱ってから長い年月、平均40年前後の潜伏期間があることです。例えば、中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後、発病するとされています。「昔、アスベストに関係する業務に携わっていたので心配だ」と思って検査を行っても、潜伏期間中は発見がでません。

そのため、アスベストを吸入してから20〜30年間は症状も病気も全くでない人が多くいます。在職中に発見が少なく、退職後に発病する理由は、この潜伏期のためです。

 

実際に起きたアスベスト飛散事故

アスベストの除去方法を間違えると、アスベストが周辺に飛散してしまいます。飛散してしまったアスベストは髪の毛よりも細かいので肉眼では確認できず完璧には回収できません。

しかし、過去にはアスベストが飛散してしまう事故が起こっています。 例えば、石巻市では2012年に商店街の元店舗で行われた解体工事で多くのアスベストが飛散してしまうという事故が発生。

周辺ではアスベストが塊で発見されるなどアスベスト飛散事故の中でもかなり深刻なものでした。

また、2016年4月に起きた熊本地震では地震の影響で損壊した17棟の建物からアスベストがむき出しになるという被害が発生し、環境省がアスベストの吸引を防止するため2万4000枚の防じんマスクを配布しました。

アスベストが及ぼす健康被害は国からもしっかり認識されており、アスベストの飛散に対して敏感になっています。

 

アスベストの事前調査は義務付けられている

撤去したい建物がある場合、取り壊し工事の前にアスベストが使われているか事前に調査する義務があり、実際に法律でも定められています。

労働者のアスベストばく露防止の観点から、労働安全衛生法、石綿障害予防規則が適用され、周辺環境へのアスベスト粉じん飛散防止の観点から、大気汚染防止法が適用されます。これらの法令により、アスベストの使用の有無の事前調査、作業の届出等が義務づけられています。また、家の撤去工事により生じる廃棄物は、建設リサイクル法、廃棄物処理法に従い、適切に処理する必要があります。

引用:国土交通省

建物にアスベストが含まれているかどうかは素人では絶対に判断できない上、健康被害を及ぼす危険性があるため、専門の業者に依頼する必要があります。

アスベストの規制にまつわる法制度の移り変わり

実際に病気を引き起こした事例でも取り上げましたが、昔はアスベストの危険性に対する理解は乏しいものでした。現在はアスベスト製品の製造、使用は完全に禁止していますが、実は最近まで建材として使用されていました。

それでは一体いつから中止となったのか、年表を見てみましょう。

1975年(昭和50年) アスベスト含有率が5%を超える吹付け作業の原則禁止[特定化学物質等障害予防規則]
1995年(平成7年) クロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)の製造、輸入、使用などを禁止(特に毒性が強いため)[労働安全衛生法施行令] アスベスト含有率が1%を超える吹付け作業の原則禁止。[特定化学物質等障害予防規則]
2004年(平成16年) アスベスト含有率が1%を超える建材、摩擦材、接着剤等10品目の製造、輸入、使用などを禁止[労働安全衛生法施行令]
2006年(平成18年) アスベスト含有率が0.1%を超える製品の製造、輸入、使用などを禁止。建築物の解体・改修作業時の規制を強化[労働安全衛生法施行令]
2012年(平成24年) 石綿及び石綿を含む製品の製造等が全面的に禁止[労働安全衛生法施行令]
 

「業者任せ」では済まされない、施主の責任と義務

アスベストの調査には、その分、費用と工期がかかります。

法改正では、そのような場合に費用負担を行う施主が工事の状況を理解し、工期や工事費において施工業者へ協力することが求められています。つまり、「早い」「金額が低い」だけの業者ではなく、アスベストへの適切な対応が可能な施工業者を選定する責任をお施主様に求める内容と言えるのです。

実際に何を調査する?

実際の調査は、下記の3つとなります。
  1. 吹付けアスベスト等の発見:露出して施工されている吹付けアスベストの有無について建物を建設した業者への問い合わせや資料確認、目視による調査を行う。
  2. サンプリング:実際の現物を持ち帰り、分析機関にてアスベストの含有率などの調査を依頼。
  3. 成分分析:分析機関にてサンプリングした試料の分析を行う

アスベストを含む建物の特徴

アスベストが含まれている建物の共通点は平成18年以前に建てられているということです。平成18年以前に建てられたものに関しては鉄骨造や木造を問わず、少なからずアスベストが使用されている可能性があります。

建設時期があいまいであればアスベストの使用有無を専門の業者に調査してもらいましょう。アスベストの調査だけなら、おおよそ3万円前後から調べてもらうことができます。

ちなみに設計図書などからアスベストの使用有無を確認することもできますが、建てられた後に改修などでアスベストが使われていた場合、設計図書だけでは判断できなくなっています。必ず専門の業者にみてもらうことをおすすめします。

アスベストを含む住宅の解体工事の相場

アスベストの除去費用はアスベストが含まれる部分の処理面積によって決まります。

例えばアスベストが使われているのが屋根の一部分であればその総面積になりますし、一部の壁面のみであればアスベストが使用されている壁面部分の総面積になります。

ちなみに国土交通省の調査(平成19年1月から12月までの1年間の施工実績195件を社団法人建築業協会が集計分析した調査結果)では処理費用の目安を以下のように公表しています。

アスベスト処理面積:単価
  • 300m²以下:2万円/m²~8.5万円/m²
  • 300m²~1,000m²:1.5万円/m²~4.5万円/m²
  • 1,000m²以上:1万円/m²~3万円/m²

例えばアスベストが含まれている部分が30m²で1m²あたりの処分費用が2万円だったとすると、住宅の解体工事の費用とは別に60万円かかるということになります。

作業員は特殊な防じんマスクと防護服を着用して作業をしますし、アスベストを含んだ廃材も気をつけて処分する必要があるため、アスベスト除去工事が含まれると見積りは少々高額になります。

実際にかかる費用は目安どおりにはいかない

アスベストを含む住宅の解体工事では同じ面積を工事しても、建物によって費用が大きく異なる場合があります。費用が大きく異なる原因はどの業者を選ぶかという以前に、アスベストの飛散性によって変わります。

アスベストの飛散のしやすさによって3段階の作業レベルに分けられそれぞれのレベルに合った作業が必要だからです。

例えば、使用されているアスベストが最も飛散しやすいレベル1だった場合、作業の2週間前に所定機関へ作業の届け出が必要になりますし、作業中も周囲に養生をして飛散防止に最大限配慮しながら作業を行わなければなりません。

しかし、飛散の可能性が最も低いレベル3だった場合には周囲の養生も不要ですし、所定の管理機関へ作業の届け出も必要ありません。

そのためレベル1とレベル3では処分費用に大きな開きが出てしまう場合があります。また、アスベストが使用されている場所によっても除去方法が変わったり、作業時間や難易度によって除去費用が変わってしまう事もあります。

 

レベル3のアスベスト除去費用の実例

実際に使用された見積書を見ながら、アスベスト除去かかる具体的な費用と金額をみてみましょう。今回紹介するのは36坪の木造住宅で屋根部分にアスベストが使われていた場合の実例です。

まず注意して見て頂きたいのは、こちらの項目です。

屋根材加算(スレート葺き加算) 65.0 1,000 65,000 石綿含有建材

右の備考欄に「石綿含有建材」と書かれていますね。アスベストは石綿ともいわれる為、こうした記載をされる場合があります。したがってこの部分がアスベストを含んだ作業項目だと判断できます。

ちなみにアスベストの除去作業にかかった費用は1m²あたり1,000円で作業面積が65m²だったので65,000円でした。

アスベスト含有部分の除去費用

m²あたりの除去費用 1,000円×作業面積65m²=65,000円

しかし、かかる費用は除去作業だけではありません。

アスベストが含まれる廃材は、通常の廃材とは異なる処分が必要なため、処分費用が別途にかかります。そこで次に見て頂きたいのが、こちらの項目です。

アスベスト含有建材(L3) 3,5 35,000 122,500 都度見積り

2枚目の見積書は上半分が主に処分費用について書かれていますがその最後の項目にアスベスト含有建材(L3)という記載があります。

この項目がアスベストの処分にかかった費用です。かっこの中にL3と書かれているのは廃材に含まれるアスベストの作業レベルがレベル3だったという事が書かれています。

処分費用は1m³あたり35,000円で3,5m³の体積があったので処分にかかった費用は122,500円でした。

アスベストを含む廃材の処分費用

1m³あたりの処分費用35,000円×アスベストを含む廃材の体積3,5m³=122,500円

除去作業にかかった費用が65,000円、処分にかかった費用が122,500円なので通常の撤去工事の費用とは別に、アスベストの除去にかかった費用総額は187,500円でした。

アスベスト除去にかかった費用総額

除去作業にかかった費用 65,000円+廃材の処分にかかった費用122,500円=187,500円

今回取り上げた実例で除去されたアスベストは一番飛散しにくい作業レベル3のアスベストでしたが、それでも18万円以上の費用が通常の撤去工事の費用とは別にかかってしまいました。

アスベストが使われている建物の撤去

アスベストの特徴や影響が大きいため、建物の解体ではアスベストに関する規定があります。まず、建築物又は工作物の解体等の作業を行うときは、あらかじめ石綿(アスベスト)の使用の有無を調査する必要があります。

アスベスト建材を使用しているかどうかは、国土交通省から出されている「目で見るアスベスト建材」で確認できます。

そして、石綿等の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、それで明らかとならなかったときには、石綿の使用の有無を分析することが必要です。

アスベストが使用されている建築物または工作物の解体等の作業を行うときは、大気汚染防止法に基づき、アスベストの除去等に係る一連の作業を開始する14日前までに、都道府県等に届出を行うことが求められています。また、アスベスト飛散防止のための作業基準を遵守しなければなりません。同時に労働安全衛生法や廃棄物処理法等の遵守も必要となってきます。

なお、解体時における石綿粉じんに関するマニュアルは、環境省、厚生労働省からでています。

アスベストを含む廃棄物の処理

 

建設リサイクル法では、吹き付け石綿及びその他の対象建築物等に用いられた特定建設資材に付着したもの有無を調査し、その結果を「分別解体等の計画等」に記載することになっています。詳細は、各行政のホームページ等で処理方法についての記載がありますので、参考にするとよいでしょう。

また、各都道府県に「産業廃棄物に関する協会」があり、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターで紹介されています。

環境省のホームページでは、アスベスト含有建材については、アスベストが他の建設資材廃棄物と混ざることのないよう、どのように除去、処分を行なうべきか、記載されています。解体とともに処分も規定に基づいた措置が必要です。

さて、このような解体工事にかかわることは、全て解体工事業者に任せればいいので、関係ないと思っておられる施主がいます。しかし、アスベストを含む規定がこのように細かく規定されており、適切な処理・処分が行われないとき、場合によっては依頼主である施主も法的に罰せられることがあります。ですから、管理責任者がいるか、マニフェストをしっかりと作成しているかなど、事前に必ず確認する必要があります。

マニフェストとは、産業廃棄物処理の流れを把握するための管理票です。産業廃棄物管理票とも呼ばれます。産業廃棄物の種類、数、処分の委託先など詳細が記されています。産業廃棄物が業者から業者へ渡される際、このマニフェストも同時に渡され、処理の流れがわかるようになっています。

ですから、産業廃棄物が業者によって不法投棄されておらず、適法に処分されたことが確認できる大切な仕組みであると言えます。

金額の低さばかりをうたい、工事で出た廃材を山林などに不法投棄するなど、ずさんな処理をする解体業者が後を絶ちません。産業廃棄物を正しく処理していると言っている業者でも、なかには管理責任者がおらず、適切な「処理・処分」を行っていないところもあるので注意が必要です。信頼できる解体業者に依頼することが大切です。

まとめ

アスベストが飛散してしまうリスクがあるため、建物の解体工事前のアスベスト調査は、必ず行わなければなりません。「手続きが不安」という方は、アスベスト除去を得意としている業者に依頼すれば、調査と工事をスムーズに進めることができます。

また、解体工事を予定している建物に「アスベストが含まれているかどうか」で工事の費用が大きく変わることも覚えておく必要があるでしょう。アスベストが含まれているかどうかの厳密な判断は専門の業者でなければわかりませんが、建設時期だけでもおおよそ判断することができます。

あなたが解体工事を予定している建物は、平成18年よりも前に建てられたものではないでしょうか?

解体工事をお考えの方は、まずは解体予定建築物の建設された時期を確認してみましょう。

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