本記事では、鉄骨造の建物を解体した際にかかる費用の相場や内訳について詳しく解説しています。建物の解体費用は、建物を取り壊す費用(本体工事費)と、建物以外の設備を取り壊す費用(付帯工事費)を計算できると、おおよその費用がわかります。
解体費用の目安を建てる際の参考になさってください。
また、費用相場の他にも、解体費用を抑えるコツや思わぬ追加費用など、耳寄りな情報もお伝えします。 鉄骨造の建物の解体をご検討中の方は、ぜひご一読ください。
鉄骨造の解体工事における坪単価の目安
坪単価で解体費用の総額は算出できない
よく、「解体費用は、坪単価に建物の延床面積を掛けて計算できる」と説明しているメディアがありますが、それは誤解です。 坪単価に延床面積を掛けて計算できるのはあくまで「建物本体を取り壊す費用」で、解体費用の総額ではありません。
次は、坪単価の意味を確認してみましょう。
坪単価の意味を解説
坪単価とは、建物本体を取り壊す際にかかる人件費と廃材などの処分費を合わせた、1m²あたりの単価です。
ちなみに、坪単価の価格は、建物の構造や立地条件、地域によって異なります。 以下は、各地域の坪単価相場をまとめたものです。
地域 | 木造 | 鉄骨造(S造) | 鉄筋コンクリート造(RC造) |
---|---|---|---|
栃木県日光市 | 2.7万円 | 2.7万円 | 5.4万円 |
群馬県桐生市 | 2.6万円 | 2.6万円 | 5.3万円 |
埼玉県狭山市 | 3.2万円 | 3.5万円 | 5.5万円 |
神奈川県平塚市 | 3.1万円 | 3.8万円 | 6.3万円 |
東京都港区 | 3.8万円 | 4.8万円 | 6.8万円 |
愛知県豊川市 | 2.5万円 | 2.8万円 | 3.5万円 |
大阪府大阪市 | 2.3万円 | 3.3万円 | 5.4万円 |
福岡県福岡市 | 2.3万円 | 3.3万円 | 4.7万円 |
※建物の延床面積は30坪を想定しています。 なお、上記の相場に建物の構造(平屋、2階建て)の区別はありません。
解体における坪単価は、木造よりも鉄骨造やRC造が高くなる傾向があります。 これは、木材よりも鉄やコンクリートの方が壊しにくく、廃材の処分単価が高額なためです。
そして、解体工事では坪単価以外にも「付帯工事費」「養生費」「残地物処分費」など、様々な費用項目があります。では、実際の見積書をもとに、解体工事における費用項目を確認していきましょう。
鉄骨造の解体事例を基に費用項目を確認【基本費用編】
見積書を確認する前に、ひとつだけ注意事項があります。
費用の名称も大事ですが、これから読む見積書では「どんな事に費用が使われているのか」に注意して読み進めてみてください。それでは、実際の見積書をご紹介します。今回取り上げるのは、千葉県にある軽量鉄骨造2階建29.5坪の建物を解体した事例です。
ちなみに、鉄骨造には「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の2種類があります。 一般住宅で使用されるのは、ほとんどが「軽量鉄骨造」で、「重量鉄骨造」はビルやマンションなど大型の建物で使用されます。
※見積書例(千葉県 鉄骨造 2階建 29.25坪)
項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|
本体工事 | ||||
軽量鉄骨造2階建 | 29.25 | 坪 | 32,000 | 936,000 |
養生シート | 200 | m² | 600 | 120,000 |
付帯工事 | ||||
前面CB塀 | 1.0 | 式 | 30,000 | 30,000 |
左面CB塀 | 1.0 | 式 | 70,000 | 70,000 |
右面CB塀 | 1.0 | 式 | 60,000 | 60,000 |
増築小屋 | 2.3 | 坪 | 28,000 | 64,400 |
植栽 | 3.0 | 台 | 60,000 | 180,000 |
土間 | 1.0 | 式 | 30,000 | 30,000 |
大谷石 | 1.0 | 式 | 40,000 | 40,000 |
建物内残地物 | 7.0 | 台 | 60,000 | 420,000 |
浄化槽 | 1.0 | 式 | 30,000 | 30,000 |
庭石 | 4.0 | 式 | 45,000 | 180,000 |
整地 | 1.0 | 台 | 60,000 | 60,000 |
端数調整 | -20,400 | |||
解体費 合計(税込) | 2,376,000 |
※上記の表は、見積書の内容を書き写したものです。
【基本費用1】本体工事費
本体工事費は、解体費用の大部分を占める費用です。
※見積書より抜粋「本体工事費」
上記の見積書では、坪単価が3万2,000円なので、29.25坪の建物の本体工事費は93万6,000円です。
【基本費用2】付帯工事費
付帯工事費は、取り壊す家の状況によって大きく異なる費用です。
※見積書より抜粋「付帯工事費」
工事ごとに壊す設備の量は異なるので、相場が均一にならない費用項目です。上記の見積書では「前面CB塀・左面CB塀・右面CB塀・増築小屋・植栽・土間・大谷石・浄化槽・庭石」が、付帯工事費に該当します。数が多いので計算式は省きますが、以上の付帯工事費額の合計は68万4,400円です。
『植栽』……草木によって造られた垣根。
『土間』……室内でも土足で歩けるようにしてある場所。土をただ固めたものから、コンクリートで仕上げたものまで存在する。
『大谷石(おおやせき)』……石垣や石段に使用される石材の一種。
【基本費用3】養生費
養生費は、近隣への被害を抑えるために必要な費用です。
※見積書より抜粋「養生費」
【基本費用4】残置物処分費
残置物処分費は、工夫次第で抑えられる費用です。
※見積書より抜粋「残置物処分費」
残置物として出る一般ごみなどは「一般廃棄物」と呼ばれ、建物を壊した際に出るがれきなどの「産業廃棄物」とは処分方法が異なります。そのため、解体業者さんは残置物を自社で処分できないケースが多いのです。多くの場合、残置物だけは他の業者さんに処分を依頼するので、解体工事とは別に費用が発生します。
上記の見積書では42万円と解体費用総額の1/5ほどの費用がかかりました。
【基本費用5】整地費
整地費は、解体後の土地運用にかかわる費用です。
※見積書より抜粋「整地費」
上記の見積書の整地費は6万円です。
なお、解体業者さんによって整地のクオリティは様々です。石ひとつ落ちてない綺麗な整地もあれば、多少の廃材なら埋めてごまかす整地もあります。
更地が汚い状態だと、土地の売却額が下がったり、建築工事の着工が遅れたりする原因にもなってしまいます。整地にこだわりたい方は、お見積りの際に業者さんに整地方法を質問したり、ホームページなどで公開されている施工実績を確認してみましょう。
【基本費用6】諸費用
上記の見積書には記載されていませんが、「諸費用」が発生する場合があります。
諸費用の内訳としては、以下のような項目が挙げられます。
「近隣挨拶費」 |
---|
挨拶回りの際に必要な粗品代です。一般的に、解体工事前には依頼主と業者さんが近隣へ挨拶回りに伺います。 |
「届け出・手続き費」 |
主に「建築リサイクル法」と「道路使用許可」への申請にかかる費用です。申請は解体業者さんが代行してくれますが、費用は依頼主が負担します。 |
「重機回送費」 |
重機を運ぶための回送車を手配する費用です。重機は公道を走れないので、重機を運ぶための回送車が必要になります。 |
「工事賠償保険費」 |
「工事賠償保険」の登録料です。近隣の家を壊してしまうなど、もしもの場合に備えて入っておく保険です。 |
「準備費用」 |
トラブルや追加費用に備えた費用です。解体業者さんによっては前もって多めに費用を設定する場合がありますが、使われなかった場合は返金されます。 |
鉄骨造の解体事例を基に費用項目を確認【追加費用編】
先程【基本編】で紹介した費用は、解体工事を行う上で欠かせない項目なので、ほとんどの場合で発生すると考えてください。 続いては、状況によって発生する追加費用をご紹介します。
【追加費用1】アスベスト除去工事費
建築物から「アスベスト」が発見された際には、特殊な工法が必要になります。
※アスベストが含まれていたプレハブ小屋の見積書 アスベスト除去に77,760円が発生しています
アスベストは優秀な建材として幅広く使用されていましたが、一方で有毒性が認められ徐々に規制の対象になりました。そして、完全に使用が禁止になったのが2012年。つまり、現在建っている家やビルにはアスベストが使用されている可能性が大いにあるのです。
なお、アスベストは壁の内部など、外観からでは分からない場所に使われているので、自身でアスベストの有無を見極めるのは困難です。
そのため、取り壊し工事の前には解体業者さんや専門家による「アスベスト調査」を行います。 調査によりアスベストの有無や量を測定し、状況に応じて適切な処理を行います。
【追加費用2】手壊し解体費
手壊し解体せざるをえない状況では、追加で費用が発生します。
※手壊し解体が発生した見積書 合計で23万円が発生しています
手壊し解体をする場合、以下のような状況が考えられます。
- 隣家との距離が近すぎる
- 家までの道が狭い
- 重機を設置するスペースがない
- ご近所トラブルを避けたい
隣家との距離が近すぎる場合、騒音や振動の影響が強すぎるので重機による取り壊しはできません。 なお、重機を運んだり敷地前に作業車を駐車したりするために、敷地前の道は普通自動車がすれ違える4m以上の道幅が必要です。
また、道幅が十分でも敷地内に重機を設置するスペースがない場合は手壊し解体が必要になります。珍しい例として近隣トラブルを避けるために、極力騒音を抑えられる手壊し解体を選ぶ依頼主さんもいらっしゃいます。
鉄骨造の解体費用を簡単に抑えるコツ4選
鉄骨造の解体費用は決して安くありませんが、工夫次第では費用を抑えることもできます。
今回はコツを4つお伝えします。どれも有効なテクニックなので、ぜひご活用ください。
【コツ1】建て替え工事の際は分離発注を行う
建物を取壊した後に、同じ敷地で新築を建てることを「建て替え工事」と言います。 建て替え工事を行う際は、建物を取り壊す「解体業者」と新築を建てる「建築業者」の2社に依頼をする必要があります。
解体と建築を別々の業者に依頼するのが、「分離発注」です。
分離発注を行わずに、建築業者だけに建て替え工事を依頼してしまうと、余計な費用である「中間マージン」が発生する可能性があります。中間マージンを発生させないだけで、解体費用は大幅に削減できます。
中間マージンの相場は解体費用総額の20%~40%です。解体費用が200万円かかる場合、最大で80万円もの中間マージンが発生することになります。
仕組みを知っていたら、何が何でも避けたい高額費用ですよね。それでは、どうして中間マージンを発生させてまで仲介業者に依頼をしてしまうのでしょうか。
それは、「業者さん選びが不安だから」です。全く知らない業界で、自分で優良な解体業者を選べる自信がなく、なんとなく安心できる大手の仲介業者に依頼をしてしまうのです。
そこで、当協会が運営する「解体無料見積ガイド」では、解体業者さんの「一括見積りサービス」を行っています。当協会に登録されている解体業者さんは、16社に1社しか通過できない厳しい審査基準を通過した精鋭揃いです。
もちろん中間マージンは一切発生しませんので、中間マージンをカットしつつ優良な業者さんに依頼したい方はぜひご連絡ください。
【コツ2】補助金や助成金を利用する
あまり知られていませんが、空き家の除却を行う際は、地区町村から補助金がもらえる場合があります。市役所などでも、積極的に説明を受ける機会は少ないので、これを機に自分が住んでいる地域の補助金制度を確認しておきましょう。
具体例として、鉄骨造の建物が対象となっている、一部地域の補助金制度の記事を以下の表にまとめました。地域を選択すると詳しい記事が読めますので、参考になさってください。
【コツ3】残置物は自分で処理をする
残置物の処分費用は、捨てる量によっては高額費用になってしまいます。しかし、残置物は自身で処分をすることで費用を抑えられます。
専門的な知識や資格は必要なく、誰でも簡単に処分できます。一例として不用品の処分方法をまとめましたので、参考になさってください。
不用品の種類 | 具体的な品名 | 処分方法 |
---|---|---|
日用品 | 可燃ゴミ 燃えないゴミ 資源ゴミ | 地域のゴミ回収で無料回収できます |
家電製品 | エアコン 洗濯機 テレビ 冷蔵庫 | 郵便局で家電リサイクル料金を支払い、指定場所へ持っていきます |
パソコン | ノート型含むパソコン本体 液晶ディスプレイ | 家電量販店やメーカーの回収サービスに依頼できます |
粗大ゴミ | タンス 布団 机 | 粗大ゴミ受付センターに連絡後、ゴミ処理券を購入し指定日に出します |
また、下記の記事では詳しい残置物の処分方法を解説しています。 ぜひ合わせてご覧ください。
【コツ4】相見積りを欠かさない
そして、解体費用を抑える最も重要なポイントは「相見積り」にあります。
見積書を比較すると、実際の解体費用相場が分かるので、より安価に契約を結ぶことができます。
まとめ
解体費用のおおまかな目安を立てられたら、実際に解体業者さんに見積りを依頼してみましょう。なお、お見積り依頼の際は、「解体無料見積ガイド」をご利用ください。ご連絡頂いたお客様のご希望に沿った解体業者さんをご紹介致します。
また、解体工事に関する疑問や不安なども、お気軽にご相談ください。お悩みの解決へ尽力させていただきます。