本記事では、鉄骨造の建物を解体する際にかかる費用の相場や内訳について詳しく解説しています。
鉄骨造の解体工事では、鋼材特有の工程が発生するため、一般的な木造住宅とは費用項目や費用相場が異なる場合があります。
また、鉄骨造ならではの追加費用や費用を抑えるコツなどもあるため、事前に把握しておくとよいでしょう。
鉄骨造の解体費用について知りたい方は、ぜひ本記事をご参考ください。
鉄骨造の解体費用相場
鉄骨造の解体費用相場は、条件によって変動します。具体的にイメージできるよう、「坪数別」「建物種別」の坪単価相場をご紹介します。
なお、下記の坪単価相場は、解体無料見積ガイドで解体工事を行った事例データを元にしています。
鉄骨造の解体費用の相場
坪数 | 平均坪単価 | 解体費用の相場 |
---|---|---|
20坪 | 4万3,349円 | 90万円~200万円 |
30坪 | 4万8,736円 | 135万円~270万円 |
40坪 | 4万4,219円 | 168万円~320万円 |
50坪 | 4万9,459円 | 210万円~400万円 |
100坪 | 4万4,266円 | 380万円~750万円 |
鉄骨造の解体費用の建物種別ごとの坪単価相場は、以下の通りです。
鉄骨造の建物の種別 | 坪単価相場 |
---|---|
住宅 | 4万4,401円 |
アパート | 5万3,684円 |
マンション | 5万3,366円 |
ビル | 6万9,220円 |
倉庫 | 3万472円 |
工場 | 3万3,593円 |
事務所 | 3万9,098円 |
駐車場 | 2万7,303円 |
店舗 | 4万2,267円 |
病院 | 3万7,607円 |
その他 | 4万3,075円 |
また、地域別の解体費用と相場は、こちらをご参照ください。
鉄骨造建物の解体工事項目
鉄骨造の解体工事では、大きく分けて「仮設工事」「本体工事」「付帯工事・廃材撤去」の工程があり、それぞれで費用が発生します。
なお、鉄骨造の解体工事では主に「ガス切断」という手壊しによる工法を用います。そんな鉄骨造の建物ならではの特徴をふまえて、解体工事項目について解説していきます。
鉄骨造建物の仮設工事
鉄骨造の解体工事に取り掛かる前に、現場ごとに最適な枠組み足場および本足場を設置する「仮設工事」を行います。
また、ガス切断をメインの工法とする鉄骨造の解体工事においては、溶断片や火花による火災防止に努めることが求められます。
そのため、防炎シートや金網ネットなどで防火対策を施すことも、鉄骨造の仮設工事の特徴です。
鉄骨造建物の本体工事
鉄骨造の解体工事では、内装材・外装材の撤去、屋根材・床材の撤去、躯体などを解体する工程があり、これらは「本体工事」と呼ばれます。
まずは内装材・外装材の撤去を行いますが、鋼材のガス切断による火花の発生に備え、可燃性の内装材はすべて撤去していきます。また、鉄骨造の外装材でよくある波形スレートにはアスベストが含まれているため、該当する建物では1枚ずつ丁寧に取り出します。
続いて屋根材の撤去に入りますが、同じ鉄骨造でも屋根材は建物種別によって様々です。
工場のような建物ではフックボルトで屋根材が直接取り付けられているので、足場板敷き・安全ロープ・安全ネットを用いて取り外していきます。
それ以外の建物では、デッキプレートやフラットプレートといった鋼材の上にコンクリートが打設されている陸屋根が多く、コンクリートを粉砕してから鋼材と剥離する作業が発生します。床材も同様の方法でコンクリートと鋼材を剥離して撤去します。
躯体の解体では転倒を防ぐことが求められるため、同一方位の壁を一度に取り外すのではなく、一定のスパンで各方位の壁を内側に倒しながら解体していきます。
鉄骨造建物の付帯工事・廃材撤去
鉄骨造の建物の解体で発生する廃材は、ガス切断により解体した鋼材が中心となります。
鋼材は重量物であるため、搬出までの一時的な保存場所を設けるとともに、作業の進捗に合わせた搬出計画を立てることが大切です。
基礎の解体では、まずはじめに土間コンクリートに解体して根切りし、基礎スラブと地中梁とを圧砕機で大割りして切り離します。切り離したあとは地中に引き上げ小割にし、客土して整地します。
鉄骨造の解体費用実例
続いて、鉄骨造の解体費用実例を2つご紹介いたします。
ご紹介する見積りデータは、すべて当協会(一般社団法人あんしん解体業者認定協会)を介して行われた鉄骨造の解体工事です。
住宅とアパートという規模の異なる2つの実例をご紹介しますので、費用項目や金額の違いなどに注目しながらご覧ください。
愛知県名古屋市40坪鉄骨造2階建て住宅
以下の見積りデータは、愛知県名古屋市で行われた鉄骨造の解体工事です。
この工事では、2階建て40坪の鉄骨造住宅とあわせて平屋建ての鉄骨造倉庫も解体しています。
見積り項目にある防音シートや防炎シートでの養生は、鉄骨造の建物の解体でよくある特徴です。
また、鋼材のスクラップ買取により25万円以上の値引きが行われていることも、鉄骨造ならではです。
建物の構造 | 鉄骨造 |
---|---|
階数 | 2階建て+平屋倉庫 |
坪数 | 40坪+11坪 |
総額 | 275万円 |
項目 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|
鉄骨造2階建解体撤去 | 134.81m² | 11,000円 | 1,482,910円 |
鉄骨造平屋倉庫解体撤去 | 36.5m² | 6,000円 | 219,000円 |
アプローチ撤去 | 8m² | 1,500円 | 12,000円 |
階段撤去 | 1式 | - | 10,000円 |
樹木伐根撤去 | 2車 | 60,000円 | 120,000円 |
庭石、灯篭撤去 | 2車 | 80,000円 | 160,000円 |
石積撤去 | 17.7m | 6,000円 | 106,200円 |
単管防音シート養生 | 150m² | 1,200円 | 180,000円 |
単管防炎シート養生 | 75m² | 1,200円 | 90,000円 |
重機回送費 | 1式 | - | 45,000円 |
アスベスト含有検査 (ALC塗料、サイディング) |
2検体 | 40,000円 | 80,000円 |
小計 | 2,505,110円 | ||
諸経費 | 250,511円 | ||
値引き(スクラップ買取含む) | -255,621円 | ||
消費税(10%) | 250,000円 | ||
合計(税込) | 2,750,000円 |
東京都板橋区100坪鉄骨造アパート
東京都板橋区で行われた、3階建てアパートの解体工事見積りデータをご紹介します。
およそ100坪という大規模な工事であるため、総額は1,000万円を超えています。
外装材にはアスベストが含まれており、その処理だけでも300万円近い費用が発生しています。
建物の構造 | 鉄骨造 |
---|---|
階数 | 3階建て |
坪数 | 100坪 |
総額 | 1,485万円 |
項目 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|
仮設工事 | |||
建物解体養生(単管防音パネル) | 122m² | 1,800円 | 219,834円 |
建物解体養生(枠組防音パネル) | 371.97m² | 2,200円 | 818,834円 |
垂直ネット養生 | 122.13m² | 400円 | 48,852円 |
水平養生 | 109.8m² | 1,500円 | 164,700円 |
昇降階段(ハッチ式) | 6ヵ所 | 11,000円 | 66,000円 |
搬入出ゲート(W=4600) | 1式 | 100,000円 | 100,000円 |
重機回送(ミニユンボ4t使用) | 1式 | 70,000円 | 70,000円 |
仮説水道設備(散水設備) | 1式 | 80,000円 | 80,000円 |
事前近隣挨拶費 | 1式 | 20,000円 | 20,000円 |
建物解体工事 | |||
内装解体 | 405.82m² | 1,600円 | 649,321円 |
ダメ穴開口作成 | 2ヵ所 | 12,000円 | 24,000円 |
屋上防水材撤去 | 127.3m² | 4,000円 | 509,200円 |
先行1階部解体 | 23.92m² | 8,000円 | 191,360円 |
建物屋上解体(2~3階 人力解体 ガス溶接含む) | 254.6m² | 10,000円 | 2,546,000円 |
建物屋上解体(地上解体 ミニユンボ4t使用) | 127.3m² | 7,000円 | 891,100円 |
外壁石綿含有材撤去(養生、処理、発生材処分費含む) | 234.24m² | 12,000円 | 2,810,880円 |
基礎解体費(杭基礎(PC杭)想定) | 127.3m² | 10,000円 | 1,273,000円 |
フロンガス回収(実数にて別途対応) | 6台 | 15,000円 | 90,000円 |
廃棄処分費 | |||
木屑 | 27.75m³ | 7,000円 | 194,252円 |
コンクリートガラ | 108.15m³ | 6,000円 | 648,900円 |
廃プラスチック | 21.13m³ | 19,000円 | 401,470円 |
廃石膏ボード | 19.32m³ | 20,000円 | 386,400円 |
混合廃棄物 | 12.68m³ | 22,000円 | 278,960円 |
混合廃棄物 | 14.81m³ | 22,000円 | 325,820円 |
生木 | 3m³ | 10,000円 | 30,000円 |
2次コンクリート | 14.72m³ | 5,000円 | 73,600円 |
へーベル | 45.04m³ | 12,000円 | 540,480円 |
外構撤去その他工事 | |||
荒整地 | 127.3m³ | 700円 | 89,110円 |
完了外周囲い(区画、トラロープ) | 11.69m | 1,500円 | 17,535円 |
諸経費等 | |||
諸官庁申請手続き(道路使用、リサイクル届、解体証明等) | 1式 | 20,000円 | 20,000円 |
その他諸経費(福利厚生費、安全管理費等) | 1式 | 400,000円 | 400,000円 |
小計 | 13,979,097円 | ||
値引き | -479,097円 | ||
消費税 | 1,350,000円 | ||
合計 | 14,850,000円 |
鉄骨造の解体工事に関する特徴
鉄骨造の建物は鋼材という特殊な建材を利用しているため、解体工事においても特徴が現れます。
最後に、鉄骨造の解体工事に関する特徴をいくつかご紹介していきます。
鉄骨の種類によって費用相場が変わる
鉄骨の建物は、使用される鋼材の厚さによって「軽量鉄骨造」「重量鉄骨造」の2種類に分けられます。
軽量鉄骨造は厚さ6mm未満の鋼材で建てられた建物のことを指し、主に3階建て以下の住宅や倉庫などで用いられます。
一方、厚さ6mm以上の鋼材で建てられた建物は重量鉄骨造と呼ばれ、マンションや工場といった大きな建物に用いられます。
軽量鉄骨造の解体費用相場は木造と大きく変わりませんが、重量鉄骨造の解体費用相場は軽量鉄骨造や木造よりも高くなる傾向にあります。
廃材の再使用を目的とした工程がある
鉄骨造の建物の解体においては、廃材を再使用することを目的とした工程が発生することがあります。
再使用する主な廃材は、溶接されていない柱や梁といった主要構造の部材です。
部材に穴が空いたり変形したりしないように、解体の際はクレーンなどで吊り降ろしを行う場合もあります。
このように、廃材を再使用するために特殊な工程を挟むことが、鉄骨造の建物の解体の特徴です。
耐火被覆材としてアスベストが使われている場合は除去費用がかかる
アスベスト含有製品は段階的に規制されており、現在は製造、使用などが完全に禁止されています。しかし、完全に規制される前の2006年以前に建てられた建築物には、建材として使用されている可能性がかなり高いといえます。
鉄骨造の建物には、耐火被覆材としてアスベストが使用されている場合が多いです。この場合は、解体時に特定化学物質障害予防規則に従い作業場所を隔離する必要があります。
アスベストが含まれる建物の解体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
鉄骨造の解体費用と相場についてのまとめ
解体費用のおおまかな目安を立てられたら、実際に解体業者さんに見積りを依頼してみましょう。なお、お見積り依頼の際は、「解体無料見積ガイド」をご利用ください。ご連絡頂いたお客様のご希望に沿った解体業者さんをご紹介致します。
また、解体工事に関する疑問や不安なども、お気軽にご相談ください。お悩みの解決へ尽力させていただきます。