古くなった小屋や納屋、倉庫をそろそろ解体したい。あるいは、母屋を壊すタイミングで一緒に取り壊そうか――そんなふうに考えている方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、「解体費用はどれくらい?」「許可や手続きは必要?」「どんな流れで進めればいいの?」など、分からないことも多いですよね。
この記事では、「小屋・納屋・倉庫を解体したいけれど、なにから始めたらいいか分からない…」という方に向けて、費用相場や解体の流れ、必要な手続きについて分かりやすく解説していきます。
小屋・納屋・倉庫とは
「小屋」「納屋」「倉庫」と聞くと、なんとなく似たイメージを持つかもしれませんが、それぞれ使い方や規模に違いがあります。解体費用にも影響するポイントなので、まずは違いをしっかり押さえておきましょう。
建物の種類 | 主な用途・特徴 |
---|---|
小屋 | 仮に建てられた小さな建物を指すことが多く、庭先の工具小屋や作業スペースとして使われることがあります。 |
納屋 | 農機具や収穫物、古道具などを保管するための物置小屋のような建物で、特に農家などでよく見られます。 |
倉庫 | 比較的大きな建物で、商品や資材などの「貨物」を保管するために使われることが多いです。個人の所有だけでなく、企業や店舗が利用する場合もあります。 |
それでは、それぞれの解体費用相場を確認していきましょう。
小屋・納屋・倉庫の解体費用相場
当協会が独自に集計した解体工事データによると、小屋の解体費用相場は1坪あたり3万4,240円、納屋は2万7,804円、倉庫は3万1,103円となっています。
ただし、これらの相場は建物の構造によって変動するため、以下に構造別の費用目安をご紹介します。
小屋の解体費用相場
建物の構造 | 解体費用相場 |
---|---|
木造 | 3万3,507円/坪 |
軽量鉄骨造 | 3万2,811円/坪 |
鉄骨造 | 2万6,012円/坪 |
納屋の解体費用相場
建物の構造 | 解体費用相場 |
---|---|
木造 | 2万7,804円/坪 |
倉庫の解体費用相場
建物の構造 | 解体費用相場 |
---|---|
木造 | 3万1,263円/坪 |
軽量鉄骨造 | 2万9,822円/坪 |
鉄骨造 | 3万999円/坪 |
RC造 | 5万314円/坪 |
なお、プレハブ小屋・倉庫の解体費用相場は、こちらの記事で詳しく解説しています。
解体費用相場は作業内容や立地条件でも変わる
解体費用相場は「建物の構造」だけで決まるわけではありません。実は、次のような条件によって、大きく費用が変わることがあります。
- 重機で壊すか手作業で壊すか
- 室内に処分するものがどれくらいあるか
- 工事をする地域
- 周辺環境
たとえば、小屋や倉庫が狭いスペースに建てられている場合、重機が入れず手作業で解体せざるを得ないことがあります。
手作業になると人手が多く必要になるため、たとえ建物が小さくても、解体費用が割高になることがあります。
また、建物の中に大量の荷物や不要品が残っていると、それを処分するための「残置物撤去費用」が加算され、全体の費用が高くなるケースもあります。
このように、解体費用は現場の状況によって大きく左右されるため、この記事でご紹介した「相場」はあくまで目安にすぎません。
より正確な解体費用を知るためには、実際に解体業者に現地を見てもらって見積もりを取ることをおすすめします。
解体工事をする際に許可は必要?
通常、解体業者が解体工事を行う際には、建設業許可(土木工事業、建築工事業、とび・土工・コンクリート工事業)、解体工事業登録のいずれかが必要です。
また、作業内容や建物の状況によっては、これら以外にも特別な資格や許可が必要になるケースもあります。
アスベスト含有の可能性がある場合
アスベスト含有製品は段階的に規制されており、現在は製造、使用などが完全に禁止されています。しかし、完全に規制される前の2006年以前に建てられた建築物には、建材として使用されている可能性がかなり高いといえます。
アスベストは作業者の健康に被害を及ぼすため、調査・除去ができるのは有資格者のみです。解体しようと考えている建物が2006年以前のものであれば、アスベスト含有の可能性があります。その場合は資格を有する解体業者に依頼しましょう。
解体無料見積ガイドでは、アスベストの調査・除去から解体工事まで一貫して対応できる優良な解体業者を紹介しています。
解体工事を行う前に必要な各種届け出と手続き
解体工事の前には、「ライフラインの停止手続き(電気・ガスなど)」「行政への届け出(建設リサイクル法など)」が必要になります。
解体工事の手続きについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
小屋・納屋・倉庫を解体する流れ
実際に小屋・納屋・倉庫の解体を行う流れについて解説します。
小屋・納屋・倉庫の解体前
まずは、解体前に行う項目を確認しましょう。
- 届け出を提出する
- 養生する
- ライフラインを停止する
- 近隣への挨拶まわりを行う
- 廃材置き場や駐車スペースを確保する
届け出を提出する
通常の解体工事では、着工7日前までに各自治体へ届け出を行うことが建設リサイクル法により義務づけられています。
ただし、届け出が必要なのは床面積の合計が80m²(24.2坪)以上の建築物です。
そのため、小屋・納屋・倉庫の場合は届け出が不要であるケースも多いです。
養生する
小屋・納屋・倉庫の解体時には粉じんが舞うため、解体業者が必ず養生を行います。
解体工事における養生の必要性は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ライフラインを停止する
工事の前に、電気、ガス、インターネットなどのライフラインの停止やケーブルなどの撤去の手続きが必要です。工事は建物だけではなく、設備の部分も撤去する必要があるためです。ライフライン停止の手続きは、工事開始の1週間前までには終えるようにしましょう。
ただし、水道は工事中に使用するため停止しない場合があります。
近隣への挨拶まわりを行う
解体工事は建物の所有者の事情で行うものですが、騒音・振動・粉塵飛散など、近隣に住む方々にも多大な影響があります。きちんと理解と協力を得ていなければ、トラブルのもとになってしまいます。そのため、近隣への挨拶まわりは必ず行うことをおすすめします。
具体的な作業内容や日時をお伝えし、解体工事に対する不安感をなくしてもらうことが何よりも重要です。
近隣挨拶については、こちらの記事で詳しく解説しています。
廃材置き場や駐車スペースを確保する
建物の取り壊しの際、建材など多くの廃棄物が発生します。近隣の方々と共有の敷地や、使用許可を取っていない道路に放置してはいけません。あらかじめどこに保管するかを決めておきましょう。
また、廃材を積むためのトラックや重機の駐車スペースが確保できず、道路使用許可を取った場合は、その道路を通るほかの車両や通行人に配慮した誘導が必要です。迂回が必要であれば事前に看板を設置したり、交通誘導員を配置したりなど対応しましょう。
小屋・納屋・倉庫解体の流れ
小屋・納屋・倉庫の解体は、以下のように進んでいきます。
- 室内の物を搬出する
- 屋根材を剥がす
- 壁材を剥がす
- 天井を抜く
- 床材を剥がす
- 躯体を上から撤去する
- 基礎を撤去する
解体業者が上記の作業を行った場合、木造で6畳(3坪)ほどの小屋・納屋・倉庫であれば半日ほどですべて完了します。
ここからは、解体作業の各項目について詳しく解説していきます。
なお、YouTubeに小屋解体の様子を載せている方がいらっしゃいましたので、映像でも作業の流れを確認したい方はあわせてご覧ください。
室内の物を搬出する
着工前に、室内に残っている荷物を取り除いておきましょう。
粗大ごみなどに出すことを想定し、前々から計画的に行うことが大切です。
屋根材を剥がす
小屋・納屋・倉庫の解体は、屋根材を剥がす作業から始まります。
剥がす際は、屋根材の設置部分にバールを差し込んで体重をかけ、テコの原理を利用します。
屋根材を固定している釘は、バールで1本ずつ外していきます。
壁材を剥がす
次に、壁材を剥がしていきます。
壁材も屋根材と同様に、バールを差し込んで剥がしていくか、ハンマーで叩いて外す場合もあります。
躯体を上から撤去していく
骨組みだけになったら、柱や梁などの躯体を屋根のほうから順に解体していきます。
躯体は、のこぎりを用いて切断します。
最終的に残った柱は、建物の内側に向かって倒します。
基礎を撤去する
最後に、大ハンマーや電動ドリルで基礎を撤去します。
なお、古い小屋・納屋・倉庫には基礎がない場合もあります。
小屋・納屋・倉庫の解体後
廃材を処分する
小屋・納屋・倉庫の解体後は、トラック何台分もの廃材が出ます。
大量に発生した廃材は、適切な方法で処分する必要があります。
建物滅失登記を行う
解体した小屋・納屋・倉庫が不動産登記されている場合、解体後1ヵ月以内に法務局へ建物滅失登記を届け出る必要があります。
解体無料見積ガイドでは、工事完了後にご自身で手続きを行うための建物滅失登記マニュアルをご契約いただいた方に無料でお送りしています。
小屋の解体費用実例
小屋の解体を業者に依頼した場合の費用は、実際の見積もりを見ることでイメージが湧きやすくなります。
そこで最後に、小屋解体の見積もり事例を2件ご紹介します。
ご紹介する見積もりは、当協会(一般社団法人あんしん解体業者認定協会)を介して実際に行われた小屋の解体工事です。
事例1 トタン製の小屋
小屋の解体費用 | |
---|---|
総額 | 100,000円(税込) |
事例1のトタン製の小屋は、手壊しでの解体です。
残置物がある場合などは、さらにコストが追加でかかります。
事例2 木造鉄板葺き屋根(9坪)の小屋
小屋の解体費用 | |
---|---|
総額 | 59万8,000円(税込) |
坪単価 | 1万5,000円(税込) |
作業日数 | 2~3日 |
事例2の小屋解体では、基礎の撤去は行っていません。
しかし、小屋の中に残置物がたくさんあり、撤去・処分に14万円近くかかっています。
事例3 プレハブ造鉄板葺き屋根(12坪)の小屋
小屋の解体費用 | |
---|---|
総額 | 45万7,000円(税込) |
坪単価 | 1万6,000円(税込) |
作業日数 | 2日 |
事例3の小屋解体では、コンクリートブロックの基礎撤去を行っています。
また、小屋本体の解体・撤去のほか、養生・重機運搬・廃材処分などに費用が発生しています。
なお、本記事でご紹介した見積もり事例は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
詳細な費用項目や内訳などを知りたい方は、あわせてご覧ください。
自分での小屋、納屋の解体を途中で諦め、続きから解体業者に依頼されるケースは珍しくありません。しかし、途中まで解体してある建物は、安全性を確保するため解体費用が割高になります。「最初から解体業者に依頼よればよかった…」と後悔しないためにも、自分で解体をするかどうかは最初にしっかり検討しましょう。