解体費用の目安を知りたいときは、解体物件の坪数を考慮する必要があります。たとえば、50坪の木造家屋の目安を算出する場合は、50坪前後の木造家屋を解体した過去の実例を参照します。
その理由は、坪数が異なれば坪単価も変動するからです。坪数によって解体工事の作業効率が変わるため、坪単価は一律ではありません。
あんしん解体業者認定協会は、過去に行われた解体工事における見積書データを多数保有しています。そこで、本記事では当協会が保有する見積書データをベースに算出した、50坪の家における解体費用の目安について紹介いたします。解体業者さんの見積金額をチェックするときなどに、参考にしてみてください。
50坪の家の解体費用は目安で175万円以上
建物における構造の種類には、木造・鉄骨造・RC造などがあります。
上記の構造の違いによって、目安となる解体費用は異なります。解体業者さんが用いる重機や工法などが、構造の違いによって変わるためです。
そこで、まずは構造別に50坪の家の解体費用と坪単価を算出します。
50坪の家における構造別の解体費用と坪単価は、以下の通りです。
○50坪の家における構造別の解体費用(全国平均)
木造 | 鉄骨造 | RC造 | |
---|---|---|---|
解体費用 | 175万~200万円 | 275万~300万円 | 400万~500万円 |
坪単価 | 35,000~40,000円/坪 | 55,000~60,000円/坪 | 80,000~100,000円/坪 |
上表より、50坪の家の解体費用は目安で175万円以上がかかると分かります。
なお、上表の金額について構造別に比較すると、RC造と鉄骨造は木造よりも金額が高くなっています。RC造と鉄骨造は、建物の強度が高くて取り壊すのに手間がかかるためです。そのため、工期が長引いて人件費がかさみやすく、木造より解体費用が高額になる傾向があります。
実例として、東京23区外で行われた2つの工事を見比べてみると、木造と鉄骨造とで坪単価に差があることが分かります。
A邸 | B邸 | |
---|---|---|
構造 | 木造住宅2階建て | 鉄骨住宅2階建て |
地域 | 東京都国分寺市 | 東京都三鷹市 |
坪数 | 54坪 | 53坪 |
坪単価 | 25,000円/坪 | 29,113円/坪 |
建物解体費用 | 1,350,000円 | 1,543,000円 |
なお、解体費用の相場は地域によっても差が生じます。 以下のページでは、地域別に解体費用をまとめています。どうぞ、参考にしてください。
解体工事にかかる総額には付帯工事費も含まれる
すでに紹介した構造別の解体費用は、家そのものを取り壊すのに必要な金額を表します。ところが、実際に解体業者さんに見積りしてもらうと、見積金額の総額は上記の坪単価で算出した金額よりも高くなるのが一般的です。ブロック塀の撤去といった付帯工事が、建物解体に伴って発生するためです。
そこで、次は見積書の内訳について紹介します。以下に、過去の解体工事における見積りデータを用意しました。
○約50坪の家の解体工事で発行された見積り例
解体工事が行われた場所 | 神奈川県大和市 |
---|---|
構造 | 木造住宅2階建て47坪 |
建物解体費用 | 1,363,000円 |
解体工事費の総額(税別) | 1,850,000円 |
品名 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|
養生費 | 230 | m² | 800円 | 184,000円 |
重機回送費 | 2 | 回 | 25,000円 | 50,000円 |
建物解体(廃材処分含む) | 47 | 坪 | 29,000円 | 1,363,000円 |
バルコニー撤去処分 | 1 | ヶ所 | 20,000円 | |
カーポート撤去処分 | 1 | ヶ所 | 10,000円 | |
樹木伐採・伐根 | 1 | 式 | 60,000円 | |
土間コンクリート | 40 | m² | 2,500円 | 100,000円 |
門扉・門そで・アプローチ解体撤去処分 | 1 | 式 | 80,000円 | |
値引き | -17,000円 | |||
合計 | 1,850,000円 |
本記事の冒頭で紹介した坪単価と比較してみましょう。まずは条件をそろえるため、上表の内訳にある「建物解体費用」に「養生費」を足します。
次に、算出した「養生費を含む解体費用」を、建物の坪数で割ります。
すでにデータで示した通り、50坪の木造家屋における目安の坪単価は35,000~40,000円/坪です。 なので、見積りデータの坪単価は目安の坪単価を下回っています。
ところが、見積りデータの「解体工事費の総額」は1,850,000円です。 上記「養生費を含む解体費用」の1,547,000円と比べると、約30万円ほど上回っています。
上記の差額である「303,000円」は、付帯工事費といった建物の解体以外にかかる費用を示しています。 つまり、紹介した見積りデータにおいては、建物の解体以外にかかる費用が「解体工事費の総額」全体の16%以上を占めているのです。
したがって、解体工事費の総額を知りたい場合は、付帯工事費等まで漏れなく計算に入れる必要があります。 本記事冒頭の坪単価を使って算出した金額と、解体業者さんの見積金額との間には、付帯工事費等の分だけ差が生じるので注意してください。
塀やカーポートの解体が付帯工事費として加算される
付帯工事の具体例を示すと、敷地に残った設備の撤去作業などです。 つまり、撤去物が多ければ多いほど、それだけ付帯工事費は高くなります。
付帯工事として代表的なものは、塀やカーポートの撤去などです。 解体工事における主な付帯工事は、以下の通りです。
費用の目安 | 備考 | |
---|---|---|
養生シート | 600~1,000円/m² | 設置・撤去費用含む |
カーポート | 20,000円 | 広さ車1台分のケース |
ブロック塀 | 2,500円/m² | ブロック塀1面で目安5万~8万円 |
土間コンクリート | 2,500円/m² | 目安3万~5万円 |
門扉 | 10,000~50,000円 | 門1対を撤去するケース |
井戸 | 100,000円 | 埋め戻し含む、お祓い含まず |
樹木 | 10,000円/立方メートル | |
庭石 | 15,000~40,000円/t | 石の種類で異なる |
アスベスト | 20,000~40,000円/立方メートル | 検査費用が別途の場合あり |
50坪の家の場合、敷地に庭があるケースが考えられます。 庭があると撤去するべき樹木や庭石が多くなり、撤去・運搬・処分費がかさむ可能性があるので要注意です。
廃材の量が多くなるほど処分費用は増える
建物解体と付帯工事で排出される廃材の運搬と処分には、人手やトラックが必要となります。 つまり、運搬費と処分費が発生します。 運搬費と処分費は廃材の量におおむね比例します。 ただし、運搬費と処分費は、解体業者さんの間で金額差があります。 解体業者さんが使う処分場に、運搬費と処分費は左右されるからです。
処分費⇒廃材処理場の定める廃材受け入れ金額が高いほど高額になる
また、解体工事の廃材を丁寧に分別している解体業者さんほど、処分費の高い「混合ごみ」の割合が低くなります。 さらに、木材や金属といった廃材について、自社のリサイクル処理場に持ち込んで再販している解体業者さんも存在します。
そのため、運搬費と処分費は解体業者さんによって異なるので注意が必要です。
立地条件は解体費用の金額に影響する
家屋の密集した住宅街など、立地によっては重機のみで解体するのが難しい場合があります。 また、道路が狭くて、そもそも重機を搬入できないケースも考えられます。 重機を使った解体が不可能なときは、手壊し解体を行います。 手壊し解体とは、解体業者さんが手作業で建物を取り壊す工法を指します。
ただし、手壊し解体は重機で解体するよりも工期がかかります。 そのため、手壊し解体が必要になると、解体費用が高くなりやすいので要注意です。 なお、手壊し解体が必要になるかどうかは、解体業者さんによって異なります。 所持している重機の種類や重機オペレーターの操作技術に差があるからです。
平屋の方が2階建てより坪単価が低くなるとは限らない
一般的には、高さのある建物ほど解体費用は高額になる傾向があります。 養生シート一つとっても高さが必要となる分、シートの面積が増えたり足場組みに手間がかかったりするからです。
ただ、廃材の運搬費・処分費を含めた解体費用の総額で2階建てと平屋とを比べると、平屋の方が坪単価が高くなるケースもあります。 平屋の方が屋根や基礎の面積が広くなる分、廃棄する屋根瓦や土間コンクリートの量も多くなりやすいからです。
- 屋根や基礎の面積
- 250坪の平屋の場合⇒50坪以上
- 50坪の2階建ての場合⇒25坪以上50坪未満
- ⇒平屋の方が、屋根や基礎の面積は広い
同じ坪数の2階建てと平屋をそれぞれ解体した場合、平屋の方が廃材の運搬費・処分費がかさむケースも考えられます。そのため、平屋の方が2階建てより坪単価が低くなるとは限りません。
事前に知っておきたい費用に影響するポイント
解体費用の金額は、ユーザーの行動によって変動する場合があります。そこで、解体工事を始める前に押さえておきたい、費用に影響するポイントについて紹介いたします。
複数の解体業者から見積書をとって比較する
解体工事の見積書は、複数の解体業者さんから取得してみましょう。すでにご紹介した通り、廃材の運搬費や処分費などは解体業者さんによって異なるからです。見積書を見比べれば、解体業者さんごとの運搬費や処分費の違いを読み取ることができるかもしれません。
また、解体業者さんと解体現場の組み合わせしだいで解体費用が変化する点も、数社から見積書を取得する理由として挙げられます。解体業者さんごとに所有する重機が異なりますし、体力のある若い職人さんが多く所属している解体業者さんほど、力仕事である手壊し解体を得意とする傾向があるからです。解体業者さんと解体現場との間には相性の良し悪しがあるので、解体業者さんが解体現場を直接確認してもらう必要があります。
したがって、複数の解体業者さんに見積りを依頼することは大切です。解体業者さんの見積書を慎重に比較してみると、効率良く解体工事を行ってもらえる会社が見つかるかもしれません。
なお、複数の解体業者さんの見積りを比較できるサービスを利用するのもお勧めです。あんしん解体業者認定協会では、当協会の独自の基準をクリアした解体業者さんのみを紹介しています。ぜひご利用ください。
依頼主自身で対応できることを済ませておく
一部の手続きを自分で行えば、代行料は発生しません。そのような、依頼者自身で対応できることを考えてみましょう。
専門業者に不用品の買い取りを依頼する
敷地内に残っている家財やゴミなどは、残置物と呼ばれています。
建物の内外に残っている残置物は、解体工事が始まる前にご自身で処分しなければなりません。以前は解体業者さんに処分の代行を依頼できましたが、今は不可能になってしまったからです。
ただし、残置物のなかには価値の高い貴金属や骨董品が含まれている場合があります。なので、専門業者に残置物を査定してもらうのがお勧めです。
貴金属や骨董品を買い取ってもらったのち、残りの残置物を処分しましょう。なお、本サイトには空き家の片付けに関する記事があります。ぜひご一読ください。
建物滅失登記の手続きを自分で行う
解体が終わったあとには、必ず建物滅失登記を行います。建て替えや土地売却をするためには、建物滅失登記の完了が不可欠です。建物滅失登記は自分で行う方法と、法律で定められた専門家に代行を依頼する方法があります。
代行を依頼した場合は、おおむね4~5万円がかかります。ですが、ご自身で登記を行えば上記の代行料は発生しません。
解体工事に対して支給される補助金を調べてみる
解体工事を行う前なら、補助金の交付を申請できる自治体もあります。申請可能な条件は、自治体ごと、または対象制度ごとに異なります。空き家を対象とする解体補助金の場合なら、主な申請条件は以下の通りです。
- 空き家が1年以上住居として使用されていない
- 空き家が個人の所有
- 空き家に抵当権などの所有権以外の権利が設定されていない
- 自治体から老朽危険空家と認定された
- 申請者が市区町村税を滞納していない
- 空き家の全部を除却する
自治体が設けた条件を満たした場合、建物本体の解体費用と運搬費・処分費のうち、一定の金額について補助されます。
ただし、補助金制度がある自治体であっても、申請できる期間は限られています。各年度の4月~5月に受付が開始され、予算の上限額に達した時点で受付が打ち切られるケースが一般的です。
詳しくは、解体予定の家がある地域の自治体の公式サイト等でご確認ください。
なお、以下は「広島県尾道市の空き家解体補助金制度」について解説した記事です。全国の自治体で多く見られる内容なので、参考にしてみてください。
まとめ
50坪の家の解体費用は、目安で175万円以上です。上記金額に付帯工事費などを加えた金額が、解体にかかる費用の総額となります。
ちなみに、出費は残置物の扱い方や登記の代行の有無などによって変動します。補助金制度については、事前に調べておきましょう。
また、解体費用は解体業者さんによって変動します。そのため、複数社から見積書を取得する方法が有効です。
なお、あんしん解体業者認定協会では、同協会が優良認定した解体業者さんのみを複数社紹介しています。どうぞ、お気軽にご相談ください。