小屋や納屋の老朽化、小屋の隣に建つ母屋の解体などに伴い「小屋なら自分でも壊せそう!」と考える方も多いかと思います。
たしかに、小屋や納屋は比較的シンプルなつくりであるため、建物の強度的にも自分で壊すことは可能です。
ただし、しっかりと準備を整えて取り組まなければ、最後まで解体を成し遂げることはできません。
そこで本記事では、小屋や納屋を自分で解体する手順や、必要な道具についてご紹介いたします。
自分で小屋を解体するには
小屋や納屋の解体を自分で行うためには、いくらかの出費が必要になります。
さらに、自分で解体をする分、必要な道具を揃えることも重要です。
そこでまずは、解体にかかる費用や、必要な道具について解説していきます。
費用は最低でも7万円以上かかる
自分で小屋や納屋を解体する場合、主に「道具の購入」「廃材の運搬・処分」に費用が発生します。
なお、今回解体する小屋は木造で、広さは6畳(3坪)を想定しています。
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道具の購入費用
30,000円以上
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廃材の運搬費用
8,000円
・軽トラックのレンタル料(6,500円/24h)
・免責保証(1,080円/24h)
・50kmぶんのガソリン代(450円)
※燃費15.5km/L、ガソリン代140円/Lで計算 -
廃材の処分費用
20,000~30,000円
上記のように、小屋を解体するには費用が発生します。
自分で小屋を解体するなら、最低でも7万円以上の出費を想定しておくとよいでしょう。
解体業者が作業を行い発生した廃材は「産業廃棄物」の扱いとなり、高額な処分費用がかかります。しかし、自分で解体した際に発生する廃材は「一般廃棄物」の扱いとなり、各自治体に格安で受け入れてもらえるケースが多いです。
小屋の解体に必要なもの
次に、木造の小屋を解体するために必要な道具を見ていきましょう。
■脚立(価格:約6,000円~)
脚立は、高い位置での作業に使用します。
あまり高すぎるとかえって作業しづらいため、ほどほどの高さのものを選ぶのがポイントです。
屋根に上って作業する場合は、ハシゴのように立て掛けて使えるものがよいでしょう。
■バール(価格:約2,000~2,500円)
柄が長いバールほど施工部分に大きな力を加えやすいため、長めのタイプを選びましょう。
ただし、柄が長いバールは重量もあり、長時間の作業が苦になる可能性もあります。
ホームセンターなどで実際に手に取り、重さを確認してから購入することをおすすめします。
なお、柄が短いバールも細かい作業に役立つため、解体業者は大小さまざまなバールを使い分けています。
■大ハンマー(価格:約2,000~3,000円)
大ハンマーは、壁やコンクリートブロックを壊すのに使います。
解体業者は、木造の解体時に「カケヤ」と呼ばれる木槌を使う場合もあります。
■釘抜き付き小ハンマー(価格:約600~1,600円)
解体作業中はもちろん、廃材の分別のために釘抜きが必要になるケースもあります。
釘抜き作業には、片側に釘抜きの付いた小さめのハンマーがあると便利です。
■のこぎり(価格:約1,500~2,000円)
建材を切断しながら解体する際に、のこぎりは必須です。
また、廃材の処分時に規定の大きさにするためにも、のこぎりがあると便利です。
■丸のこ(価格:約5,800~10,000円)
必須ではありませんが、電動の丸のこがあると便利です。
ただし、初心者は革手袋を着用するなど、操作には細心の注意が必要です。
身を守るためにあるといいもの
■ヘルメット(価格:約2,000円~)
■防塵ゴーグル(価格:約500~1,500円)
■防塵マスク(価格:約2,000円~)
小屋の解体作業中は粉じんが舞い、目の中に入ったり吸い込んだりする恐れがあります。
作業を快適に行うためにも、ゴーグルとマスクがあるとよいでしょう。
■手袋(価格:約900~2,500円)
手元の怪我を防ぐためにも、作業中は手袋の着用をおすすめします。
手袋を選ぶなら、滑り止め付きの作業用手袋がよいでしょう。
■安全靴(価格:約3,000円~)
通常のスニーカー・運動靴などでも問題はありませんが、保護性能の高い安全靴のほうが解体作業には適しています。
安全靴を履いておけば、足裏に釘や廃材が刺さるのを防いでくれます。
小屋解体の手順を見てみよう
次は、実際に小屋や納屋を解体する手順について解説します。
小屋の解体前
まずは、解体前に行う項目を確認しましょう。
- 届け出が必要かどうか
- 養生が必要かどうか
- ライフラインの廃止
小屋撤去の前に届け出は必要?
通常の解体工事では、着工7日前までに各自治体へ届け出を行うことが建設リサイクル法により義務づけられています。
ただし、届け出が必要なのは床面積の合計が80m²(24.2坪)以上の建築物です。
そのため、小屋や納屋の場合は届け出が不要であるケースも多いです。
小屋に養生は必要?
小屋や納屋の解体時には粉じんが舞うため、解体業者であれば必ず養生を行います。
自分で解体する場合であっても、粉じんが舞う可能性があるならば養生は行ったほうがよいでしょう。
自分で養生を行う場合は、小屋の屋根の上からシートを被せ、さらに作業中に散水を行うことで、広範囲に粉じんが舞うことを防げます。
また、車や室外機などにも粉じんが被らないよう、シートをかけておくことも有効です。
ライフラインの廃止
工事の前に、電気、ガス、インターネットなどのライフラインの停止やケーブルなどの撤去の手続きが必要です。工事は建物だけではなく、設備の部分も撤去する必要があるためです。ライフライン停止の手続きは、工事施行の1週間前までには終えるようにしましょう。水道は工事中に使用するため停止しない場合があります。
小屋や納屋に電気・ガス・水道などを引いている場合は、解体作業を始める前に廃止の手続きを行います。
なお、解体時に散水を行う場合は、水道のみ止めないようにしましょう。
小屋解体の手順
ここからは、解体業者が実際に行う作業工程を参考に解体手順をご紹介します。
小屋や納屋の解体は、以下のように進んでいきます。
- 室内の物を搬出する
- 屋根材を剥がす
- 壁材を剥がす
- 天井を抜く
- 床材を剥がす
- 躯体を上から撤去する
- 基礎を撤去する
解体業者が上記の作業を行った場合、木造で6畳(3坪)ほどの小屋であれば半日ほどですべて完了します。
初心者の方でも、2~3日ほどあれば解体できるでしょう。
ここからは、解体作業の各項目について詳しく解説していきます。
なお、YouTubeに小屋解体の様子を載せている方がいらっしゃいましたので、映像でも作業の流れを確認したい方はあわせてご覧ください。
室内の物を搬出する
着工前に、室内に残っている荷物を取り除いておきましょう。
粗大ごみなどに出すことを想定し、前々から計画的に行うことが大切です。
屋根材を剥がす
小屋や納屋の解体は、屋根材を剥がす作業から始まります。
剥がす際は、屋根材の設置部分にバールを差し込んで体重をかけ、テコの原理を利用します。
屋根材を固定している釘は、バールで1本ずつ外していきます。
壁材を剥がす
次に、壁材を剥がしていきます。
壁材も屋根材と同様に、バールを差し込んで剥がしていくか、ハンマーで叩いて外す場合もあります。
躯体を上から撤去していく
小屋が骨組みだけになったら、柱や梁などの躯体を屋根のほうから順に解体していきます。
躯体は、のこぎりを用いて切断します。
最終的に残った柱は、建物の内側に向かって倒していきましょう。
基礎を撤去する
最後に、小屋の基礎を撤去します。
コンクリートブロックの上に乗っている小屋であれば、大ハンマーでコンクリートブロックを砕いて撤去していきます。
土間コンクリートはハンマーで解体できないため、基礎が土間コンクリートの小屋であれば解体業者に依頼する必要があります。
なお、古い小屋には基礎がない場合もあります。
小屋の解体後
小屋や納屋の解体後は、トラック何台分もの廃材が出ます。
大量に発生した廃材は、適切な方法で処分する必要があります。
廃材の受け入れ先を探す
自治体ごとに廃材の受け入れ方法が異なるため、解体後は各自治体の役所・役場などに相談をしましょう。
廃材の受け入れ施設や処分時の注意事項などを教えてもらえるので、それに従い処分を行います。
ご参考までに、小屋や納屋の解体で発生しそうな廃材の、各自治体ごとの処分例をご紹介します。
■神奈川県横須賀市の例
神奈川県横須賀市では、木材やベニヤ板を「持ち込みごみ」として、横須賀ごみ処理施設(エコミル)で受け入れています。
なお、手数料として「ごみ重量10kgまでごとに150円」が発生します。
また、木材やベニヤ板を持ち込む際は、以下のように処理しておく必要があります。
太さが直径10cm未満の木材 | 長さを1m以下にする |
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太さが直径20cm未満の木材 | 長さを50cm以下にする |
太さが直径20cm以上の木材 | 半分に割った上で、長さを50cm以下にする |
ベニヤ板(90cm×180cm程度のもの) | 4等分以下の大きさにする |
■長野県松本市の例
長野県松本市では、板等を処分する際に「長さ50cm×直径30cmの束にし、指定ごみ袋をつける」という条件を満たせば、可燃ごみとして回収してくれます。
松本市のように、木材を通常の可燃ごみとして回収可能な自治体は、ほかにも存在します。
ただし、小屋や納屋の解体ではかなり大量の廃材が発生するため、トラックなどで処分施設に持ち込むほうが現実的でしょう。
小屋の取り壊しで出た廃材の分別
処分する木材に釘が刺さったままだと、処分施設での受け入れを断られる場合があります。
もし受け入れてもらえたとしても、施設側で分別作業が発生するため、処分費用が割高になるケースもあります。
解体する段階から素材を分別しながら作業を進め、釘抜きや切断といった細かい分別作業を解体後にまとめて行うとスムーズです。
建物滅失登記を行う
解体した小屋や納屋が不動産登記されている場合、解体後1ヵ月以内に法務局へ建物滅失登記を届け出る必要があります。
建物滅失登記の詳しい手続きや事例などは、こちらの記事で解説しています。
小屋の解体を業者に頼むなら
ここまで、自分で小屋や納屋を解体するためのノウハウを詳しく解説してきました。
しかし、中には「自分で解体するのは無理かもしれない…」と感じた方もいらっしゃるかと思います。
そこで、解体業者に依頼する場合の費用についても解説していきます。
解体工事費は建物の条件によって変わる
小屋や納屋の解体費用は、構造や大きさだけでなく、以下のような条件によって変わることがあります。
- どんな材質なのか
- 重機で壊すか手作業で壊すか
- 室内に処分するものがどれくらいあるか
- 工事をする地域
- 周辺環境
トタン製やスチール製、プラスチック製の小屋に比べ、基本的に木製の小屋の方が処分費は低くなります。
ただし、トタンやスチールは素材としての再利用価値が高く、廃材の品質や状態によっては業者が買い取ってくれる場合があります。
また、狭いスペースに建てられている小屋や納屋の場合、重機を使用できず、解体を手作業で行うケースがあります。
手作業での解体は人件費が多く発生するため、小屋の解体といえども費用が割高になる場合があります。
それに、小屋の中にモノが多く残っているほど「残置物撤去費用」が高くなります。
このように、解体費用は様々な要因によって上下するため、相場を一概に申し上げることは難しいです。
小屋解体の事例
小屋の解体を業者に依頼した場合の費用は、実際の見積りを見ることでイメージが湧きやすくなります。
そこで最後に、小屋解体の見積り事例を2件ご紹介します。
ご紹介する見積りは、当協会(一般社団法人あんしん解体業者認定協会)を介して実際に行われた小屋の解体工事です。
事例1 トタン製の小屋
小屋の解体費用 | |
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総額 | 100,000円(税込) |
事例1のトタン製の小屋は、手壊しでの解体です。
残置物がある場合などは、さらにコストが追加でかかります。
事例2 木造鉄板葺き屋根(9坪)の小屋
小屋の解体費用 | |
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総額 | 59万8,000円(税込) |
坪単価 | 1万5,000円(税込) |
作業日数 | 2~3日 |
事例2の小屋解体では、基礎の撤去は行っていません。
しかし、小屋の中に残置物がたくさんあり、撤去・処分に14万円近くかかっています。
事例3 プレハブ造鉄板葺き屋根(12坪)の小屋
小屋の解体費用 | |
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総額 | 45万7,000円(税込) |
坪単価 | 1万6,000円(税込) |
作業日数 | 2日 |
事例3の小屋解体では、コンクリートブロックの基礎撤去を行っています。
また、小屋本体の解体・撤去のほか、養生・重機運搬・廃材処分などに費用が発生しています。
なお、本記事でご紹介した見積り事例は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
詳細な費用項目や内訳などを知りたい方は、あわせてご覧ください。
プレハブ小屋や倉庫の解体費用はどれくらい?実際の工事金額は?
自分での小屋、納屋の解体を途中で諦め、続きから解体業者に依頼されるケースは珍しくありません。しかし、途中まで解体してある建物は、安全性を確保するため解体費用が割高になります。「最初から解体業者に依頼よればよかった…」と後悔しないためにも、自分で解体をするかどうかは最初にしっかり検討しましょう。